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8月ももう後半だというのにこの暑さは一向に収まる気配が無い。 そんな中でも俺達SOS団はクーラーも無い文芸部室に律儀にも全員集まっていた。 何でも今日は重大な会議があるとか。 ハルヒ「み、みんなよく集まったわね。さ、古泉くん説明して。」 ん?何か今日は様子がおかしいな。 古泉「僕の親戚の富豪が田舎に大きな屋敷を持っているんですが、そこに出るらしいのですよ。 幽霊がね。そこでこれはSOS団の活動にも嵌るのではないかと思って屋敷探索を提案したんです。」 ハルヒ「そういうことなのよ。でも、みんなが恐いっていうならこの探索は中止にしてもいいわよ。 それに夏休みもまだ残ってるし、みんなにも予定があるんじゃない?」 キョン「俺は別に平気だが」 長門「平気」 朝比奈さんは恐がって行くのを躊躇するかと思われたが意外にも乗り気であった。 みくる「屋敷で肝試しですか?孤島でやったのよりも楽しそうですね。」 未来には肝試しという習慣は滅びているのか?朝比奈さんはやけに夏のイベントに積極的だ。 それに超科学を普段から目にしている未来人の彼女には幽霊などちっとも恐くはないのだろう。 ハルヒ「みくるちゃんにキョン、強がらなくていいのよ?ここで逃げたって誰も責めはしないわ。 もちろん私は行きたいけど、一人でも欠席者が出たら、全員での思い出が作れないからね。 きっぱり中止するわ。」 キョン「俺は平気だって。」 どうせ今回のこれも古泉とその機関が用意したサプライズパーティーだろ。 それに朝比奈さんが非常に興味津々だし、俺も屋敷探索に賛成しておく。 ハルヒ「そ、そう。ならいいのよ。それじゃ各自準備しておいてね。」 その日の帰り道、俺は古泉に今回の提案について問いただした。 キョン「今回も機関が関わってるのか?」 古泉「いえ、今回は機関は全く関係がありません。本当に出るらしいんですよ。 その僕の親戚というのが、普段は冗談を言いそうもない堅物なお方なのですが、幽霊を見たなどと 騒ぎ出してしまいましてね。とても嘘をついているようには見えないのです。 もしかしたら非現実的な何かがあの屋敷にいるのかもしれません。」 宇宙人や未来人や超能力者が現に俺の周りにいるのだから、本物の幽霊がいたとしても たしかに不思議ではないな。俺は途端に恐くなった。 古泉と別れたあと、長門に相談してみた。 キョン「なあ長門、さっきの古泉の話聞いてただろ?あいつの言ってることは本当なのか? 本当は機関も関与してるパーティーなんじゃないのか?」 長門「古泉一樹は嘘は言っていないと思われる。」 ヤバイ・・・恐い! 行くのが嫌になってきた。 だが朝比奈さんは行くのを楽しみにしてるようだし、ここでやっぱり行くのやめたなんて言ってみろ。 朝比奈さんに根性無しだと思われるではないか! 行くしかないのか・・・ 探索当日、電車を乗り継いで屋敷に向かった。 古泉や朝比奈さんは楽しそうにしていたが俺はとてもそんな気分にはなれない。 やっぱり本当に幽霊やらゾンビやらが居るかもしれないとなると恐怖を抑えきれない。 古泉「僕も少々恐怖はありますがね、涼宮さんなら何とかしてくれるだろうと思っているんです。 だからこそこの提案を持ち出したのですよ。何も無ければそれはそれで安心ですし。」 と俺に耳打ちをした。 ハルヒだが、何だかコイツも元気が無いように見えるのは気のせいか? 顔は笑っているが、何だか無理に表情を造っているような感じだ。 泳げないのに泳げると嘘をついて友達にプールに誘われてしまい、プールに着いて水に入る前の 小学生みたいな表情だ。わかりにくい表現でスマン。 そうこうしてるうちに屋敷に着き、いかにも頑固そうなオジサンが門の前に居た。 オジサン「キミ達が一樹の紹介でやってきた霊媒師か! 早く除霊を頼む! 金ならいくらでも出すから!」 どうやらこのオジサンは屋敷の中で生活することができず、ずっとホテルで生活していたようだ。 何かだんだんマジっぽい状況になってきた。寒気がしてきた。恐い。 古泉「任せてください。ですがこの屋敷相当大きいですね。オジサンにも道案内のために 一緒に入ってほしいのですが。大丈夫です。彼らの傍にいれば平気ですよ。」 そう言ってオジサンを先頭に立てて俺達は屋敷に入った。 こういう状況がこの中で一番好きそうなあの女、涼宮ハルヒは、 オジサン・古泉・朝比奈さん・長門、という順番で入っていった列の長門のすぐ後ろに 着いて歩き始めた。意外だな。てっきり前に着いて俺達を先導するのかと思いきや。 ハルヒ「キョ、キョン。ああアンタは私の後ろね!早く来なさいよ!」 まさかコイツは・・・ 俺達は屋敷内をくまなく捜索したがとくに怪しい物はなく、幽霊やゾンビといったものにも遭遇しなかった。 そもそも幽霊って目に見えるのか?という疑問はさておき、この屋敷にはとくに何も無さそうだ。強いて言えば蚊が多いな。 オジサンが幽霊だと騒いでいたのも、窓から入る風の音が呻き声に聴こえたとか、 その程度の勘違いだろうという結論を下した。 やっぱ幽霊なんているわけないよな。 ハルヒ「なーによ、幽霊の奴、私たちにビビってどこかに隠れてるんじゃないの?出て来なさいよ!」 ハルヒにいつもの元気が戻った。まあお前の気持ちはわからないでもない。俺も恐かったしな。 キョン「俺は最初から幽霊なんているわけないって思ってたがな。でもこんなでかい屋敷で 本格的な肝試しも悪くないな。」 オジサン「ふん、バカバカしい。やはり霊能力特番みたいな下らない番組など見るんじゃなかったわ! キミ達もこんなことに付き合わせて悪かったね。少ないけどこれで美味しい物でも食べなさい。 ワシはちょっとトイレに行く。・・・一樹、まだ少し恐いからついてきてくれるか?」 そう言ってオジサンは古泉を連れてトイレへ行った。情けないジイサンだ。 ハルヒ「でも少し拍子抜けよね。幽霊をとっ捕まえてSOS団の団員にしてあげようと思ってたのに。」 キョン「いいなそれ。そいつが雑用係になってくれたら俺も少しは楽になるってもんだ。」 ギャアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーー!! トイレの方から叫び声が聞こえた。俺とハルヒ、朝比奈さんに長門は急いでトイレに向かった。 トイレの前には古泉がいて、しきりにドアをノックしてオジサンを呼んでいた。 古泉「どうしたんですか!チャックに皮を挟んだのですか?あ、みなさんドアを破るのを 手伝ってください! オジサンがチャックに皮を挟めたようなので!」 ドアを蹴破るとそこには青白い顔で倒れているオジサンの姿があった。 オジサン「赤い着物の女が・・・赤い着物の女が・・・」 俺達は倒れているオジサンを布団まで運んで寝かした。それでも寝言を言い続けている。 オジサン「赤い着物の女が・・・・こっちに来る・・・・」 キョン「これはあれだ。昔泣かした女の幻覚でも見たんだろ。」 古泉「オジサンは女に泣かされても泣かしたことはありません。」 キョン「じゃあ何だ?これは赤い着物を着た女の仕業だとでも?」 古泉「わかりません。ただ得体の知れない何かがいるのは確かでしょうね。」 みくる「やっぱり幽霊ですか・・・?」 キョン「そんなわけないっすよ。どうせオジサンはチャックに皮を挟んだショックで倒れただけですよ。」 キョン「俺は幽霊なんて非科学的なものは断じて信じない。アホらし。付き合いきれねえよ。 みんな帰ろうぜ。」 そう言って俺は立ち上がった。 古泉「・・・何ですかこれ?」 長門「・・・・・・」 俺は右手で長門の手を掴み、左手で古泉の手を掴んで屋敷を立ち去ろうとしていた。 キョン「い、いや、お前らが恐がってると思って気を使って手を繋いでやったんだ!」 長門「手が汗ばんでる・・・」 古泉は俺の気遣いを振り払い、いきなり嘘を叫んだ。 古泉「 あ っ! 赤 い 着 物 の 女 が そ こ に ! ! 」 ガッターン!ガサガサ・・・ 俺はすぐさま押入れに飛び込んで隠れた! みくる「何やってるんですかキョンくん?」 キョン「いやあの カブト虫がいた気がしたので捕まえようと・・・」 みくる「キョンくん、もしかして幽霊が・・・・」 キョン「ビビってないですって!ホントです!」 古泉が人をバカにしたようなニヤケ面をしながら肩をすくめていた。 古泉「意外と臆病なんですね。女性陣は平然としていらっしゃるのに貴方ときたら・・・。 涼宮さん、どう思いま・・・・」 ガタ! ガタガタ! 置き物のでかい壷の中に一生懸命隠れようとしているハルヒの姿があった。 古泉「涼宮さん・・・一体何を・・・?」 ハルヒ「いやあの エデンへの入り口が・・・」 古泉・朝比奈さん・長門の無言の冷たい視線が俺とハルヒに向けられる。 キョン「何だその目は! 待て待て! 違うんだ! ハルヒはそうかもしれんが俺は違うぞ!」 ハルヒ「ちょっ、ビビってるのはアンタでしょ! 私はあれよ。胎内回帰願望があるだけよ!」 古泉「ハイハイ。わかりました わかりました」 長門「エデンでも胎内でもどこへでも行けよ」 急に古泉・朝比奈さん・長門が沈黙をし、目を見開いて俺達の後方を凝視した。 その目が次第に恐怖を感じているときの目に変わっていった。 キョン「何だオイ。驚かそうたって無駄だぞ。同じ手は食わん。」 それでも三人は固まって俺達の後ろを凝視している。顔が真っ青だぞ。 ハルヒ「ちょっと・・・しつこいわよ。」 古泉「ウワ―――――――ッッ!!」 みくる「キャ―――――――ッッ!!」 長門「!!!!!!!!!!!!!!」 三人は悲鳴を上げながら大急ぎで走って逃げた。 キョン「ったく、手の込んだイタズラしやがって。朝比奈さんまで・・・」 ハルヒ「バカね。こんなくらいで驚くわけないじゃない。」 二人が振り向くとそこには赤い着物を着た女が逆さまになってこちらを凝視していた。 キョン・ハルヒ「・・・・こ、こんばんは~・・・・・・・・」 ギャアアアアアアアアアアアアア―――――――ッ!! 場面は走って逃げている古泉達に移る 長門「見ちゃった・・・本当にいた・・・」 みくる「キョンく~ん! 涼宮さ~ん!」 古泉「二人のことは忘れましょう!もうダメだ!」 古泉がふと振り向くと、キョンとハルヒが走って来ていた。 みくる「あ、何とか切り抜けてきたようですね。」 古泉「いや待ってください。 しょってる! 着物女をしょってますよ!」 みくる「イヤ―――――――ッ!」 古泉「こっち来るなァァァ!」 走って古泉達に追いつこうとしているキョンとハルヒは・・・ ハルヒ「ちょっと! みんな何で逃げるのよ! コラー! みくるちゃんに古泉君に有希! 待ちなさーい!」 キョン「なあハルヒ、やけに背中の半分が重いんだが、お前はどうだ?」 ハルヒ「そういえば重い・・・キョン、ちょっと確認してくれない?」 キョン「うるせーな自分で確認しろよ。」 ハルヒ「じゃあこうしましょう。せーので同時に振り向いて確認ね。」 キョン「お前も絶対見ろよ?裏切るなよ?」 せーの! 恐ろしい顔した女が俺とハルヒの背中に乗っかっていた。 どおりでハルヒから離れて走ることができなかったわけだ。 ギャアアアアアアアアアアアア―――――――――ッ! ギャアアアアアアアアアアアア――――――――ッ! ・・・・・・・・・・・ 古泉達は外にある物置の倉庫に隠れていた。そこでキョンとハルヒの悲鳴を聞いていた。 みくる「悲鳴が・・・」 古泉「今度こそやられたのでしょう・・・」 長門「しめた。これでヒロインの座は私のもの」 古泉・みくる「言ってる場合か!」 みくる「何でこんなことに・・・」 古泉「実は以前に彼(キョン)を亡き者にするために外法で妖魔を呼び出そうとしたことがあるんです。 あの化け物はもしかしたらそのときの・・・」 みくる「何てことしてるんですか!貴方のせいでキョンくんと涼宮さんは~!」 古泉「ちょ、ここせまいんですから暴れないでくださ・・・」 古泉がふと戸の隙間を見ると、そこから自分達を覗き見ている女の顔が・・・ 古泉「ぎゃあああ―――――――! 出、出、出すぺらァど――――!」 古泉は女に向かって急に土下座を始めた。 古泉「スミマセン!とりあえずスミマセン! マジ スミマッセン! ほら見て!マッガーレ!マッガーレ!」 古泉はみくると長門の頭を掴み、地面に叩きつけて無理矢理に土下座をさせた! 古泉「テメーらも謝れバカヤロー! 心から頭下げればどんな人にも心通じんだよバカヤロー!」 ハルヒとキョンは池の近くにある草むらに隠れて着物女をやり過ごしていたようだ。 その着物女が古泉達の元に行っていることを知らず、また古泉があんなことになっていることも知らずに 二人は怯えながら隠れていた。 ハルヒ「ね、ねえキョン。よーく考えたらあの女って幽霊でもオバケでも何でもない、ただの人間じゃない?あんたビビりすぎよ。」 キョン「そういやそうだな。足もあったし口が裂けてたわけでもないし、ちょっと顔が恐いだけの女の人だったような。ビビってんじゃねーよハルヒ」 ハルヒ「そ、そうよ!古泉君達があの人を見ていきなり驚いて逃げるもんだから、てっきりオバケかと思ったけど」 キョン「よく考えたらオバケのわけないよなw古泉も臆病なヘタレ野朗だな。次会ったらただじゃおかねー」 ハルヒ「あの女もとっちめてやるわ。まあ私は逃げてる間もアンタと違ってあの女にメンチ切ってたけど」 キョン「俺なんてずっと奴をつねってた」 ハルヒ「小さいのよアンタは。私なんて・・・」 ガ サ ッ ! ! ドボン! ドボン! 急な物音にキョンとハルヒはビビッて池に飛び込んだ。 その物音の正体がただのカエルの仕業だったことに気づいて安堵した。 ハルヒ「さ、さーて、水も浴びてスッキリしたことだし、そろそろ反撃といくわ」 キョン「む、無理すんなよ声が震えてるぞ。女と古泉は俺が仕留める。ヘタレは帰れ」 ハルヒ「ビビッてんのはアンタでしょ?ホントは股間が濡れてるから池に飛び込んだんじゃないの?」 キョン「俺達がここで争ってもしょうがねー。俺達を驚かして楽しんでるあの女に説教の一つでもしてやるぞ。」 そう言って俺達は歩き出し、古泉達とその女を発見した。着物女に一生懸命土下座していた。 古泉「あのホント、靴の裏も舐めますんで、勘弁してくださいよ!」 何しとんじゃアイツ・・・ 古泉は朝比奈さんと長門の頭を地面にめり込ませながら土下座をしまくっていた。 しかし俺達が駆けつけると女はすぐにどこかへ逃げて消えた。それでも古泉は気づかずに土下座を続けていた。 キョン「古泉・・・」 古泉「うわああ!すいませ・・・。ああ、貴方でしたか。これは彼女を油断させてから取り押さえようという僕の作戦 でしてね。朝比奈さんと長門さんにも協力してもらおうと思って土下座をさせたんですよ。」 俺とハルヒの無言の冷たい視線が古泉を攻める。 古泉「信じていないようですね。まあ次に彼女が出てきたら僕に任せてください。 すぐに片付けますから。 赤い着物を来たお方、出て来なさい!この僕が引導を」 赤い着物の女「なんだァァァ!やれるもんならやってみろォォォォ!」 古泉「ヒィィィィィ―! 出たァァァ!」 ハルヒ「ダ―――ッ!もうヤバイもうヤダ!」 キョン「ハルヒに古泉、よく見ろ。彼女は幽霊でもゾンビでもない。普通の人間だ。」 ハルヒと古泉は恐る恐る彼女を凝視した。人間であると確認するやいなや、彼女を強引に取り押さえた。 ハルヒ「もう逃げられないわよ!観念なさい!」 古泉はクールな顔でカッコつけて彼女を護身術みたいなすごい技で取り押さえた。 コイツら急に強気になったなw ハルヒ「さあ白状しなさい!何で貴方はこの屋敷にいるの?」 女「本当にすいませんでした。彼(屋敷の主)に中出しされたせいで子供が出来ちゃったんです。 私は彼と一緒にこの子を育てたかったのに彼は生涯一人で生きると言って認めてくれなかったんです。 そこで私はオバケのふりをしてこの屋敷に潜伏し、彼を驚かしていたの。 彼が一人でいるのが恐くなれば私と結婚してくれるかと思って」 阿呆だなこの女。でもお腹には子供がいるのか・・・。 古泉「そういうことだったのですか。オジサンもスミに置けませんね」 みくる「何だか気の毒ですね・・・。」 オジサン「知るか知るか!あの夜はワシは酷く酔っていたのだ。どんなゴリラでもいいから 一発やりたい気分だったんじゃ!でなきゃ誰がこんな女と。こんな女のためにびた一文たりとも 金を使う気はない!出てけー!」 ハルヒ「・・・・・・・・・」 ガタン! ガタガタ! バリーン! 何だ今の音? 俺達はその音がした方向へ向かった。 棚に置いてあった重く高価そうな壷が落ちて割れていて、額に入って飾られた絵も落ちていた。 古泉「地震も無かったのに妙ですね・・・。野良猫がこんな重い壷を動かせるとは思いませんし・・・。」 オジサン「棚にも特に変化がない・・・不思議だ・・・」 ハルヒ「もしかしてこの屋敷、まだ何かいるんじゃ・・・」 オジサン「そ、そんな・・・。おい女、これもお前の仕業か!?」 女「私は本当に知りませんよ・・・?」 たしかに妙だ・・・ オジサン「一体何だというんだ! 誰がやった!」 古泉「我々は彼女も含めてたしかに全員揃っていました。そしてこの壷はそう簡単に倒れるような物ではありません。」 ハルヒ「得体の知れない何かがこの屋敷にいるってこと?」 オジサン「ヒィィィッ!そんな!」 不穏な空気が辺りを包む中、ハルヒが口を開いた。 ハルヒ「ねえオジサン、この屋敷、何か霊的なものが潜んでそうでオジサン一人じゃ恐いでしょ?ずっとホテルに住むわけにはいかないし、 新しい家を建ててもこういう霊ってついてくるものよ。この際だから彼女と一緒に住んじゃえば? そうすれば恐怖も和らぐだろうし、それに賑やかな家庭には霊やオバケは現れないものよ。」 オジサン「・・・そうじゃな。おいお前さん、良ければワシと一緒に住まないか? さっきはゴリラなんて言ってすまなかったな。ワシ、照れ屋なんじゃ。」 こうして二人は一緒に住むことになったらしい。 これはハルヒが望んだことなのだろう。 彼女を不憫に思ったハルヒが、またあの奇妙なデタラメパワーを使って壷を割り、オジサンを恐がらせることでオジサンを素直にさせた。 俺はそう思いたい。 ―翌日― 恐怖の幽霊探索ツアーを終え、翌日の月曜の放課後、いつもの如く文芸部室に俺、ハルヒ、古泉、長門が集まっていた。朝比奈さんはまだHRが終わってないらしい。 ハルヒ「幽霊に会えなかったのは残念ね。とっ捕まえてSOS団のパシリにしてやろうと思ったのに。」 ビビってたくせによく言うぜ。 古泉「所詮は霊や妖怪と言ったものは、人が恐怖を感じるもの・・・例えば腐敗した死体や夜の暗闇、災害などを大袈裟に捉えたものらしいですからね。 また、言うことを聞かない子供に恐怖を与えて言うことを聞かせようとするためにオバケなる存在を考えたとか。」 もうお前が何言っても笑えるよw ハルヒ「でもあの女の人、幸せになれるといいわね。」 古泉「オジサンはああ見えて出来たお方です。少し照れ屋なだけなのですよ。大丈夫、あの二人ならいい家庭を築けますよ。」 まあ実際に幽霊やゾンビと言ったものに出くわさなくてよかった。そんなものがいるわけはないが、この団長様の前ではどんな常識も無効化されちまうからな。 それにしてもあのハルヒにも弱点があったとはなw オバケが恐いなんて可愛らしいところも・・・ ガチャ・・・・ ガッターン! バリーン! みくる「あ、あ、あ、すみませ~ん。普通に開けたはずなのに、いきなり外れちゃいました・・・。」 度重なるハルヒの乱暴なドアの開け方のせいで寿命が早まったドアは、朝比奈さんがドアを開けたそのときに外れて倒れた。 それはもう物凄い大きい音で倒れて壊れた。 みくる「・・・み、みなさん、何をしているんですか?・・・」 俺、ハルヒ、古泉の三人はビビッて机の下に隠れていた。 キョン・ハルヒ・古泉「いやあの コンタクト落としちゃって」 長門「ヘタレが三人」 ところであのオジサンの屋敷はもう大丈夫なのだろうか? 二人の仲のことじゃなくて、おそらくハルヒが生み出したであろう霊的な現象は収まったのだろうか。 まあ幸せな家庭には霊やオバケは現れないとかハルヒ自身が言ってたし、 オジサン達が仲良くやっていればもう何も起きんだろう。 屋敷にて 女「アナタ、最近帰りが遅いけど一体どこで何してるの?」 オジサン「黙れ黙れ。ワシがどこで何をしようとワシの勝手だ。お前はただ家事だけをやっていれば・・」 バリーン! オジサン「ヒィィィィィィッ!」 完
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涼宮ハルヒの24 シーズンⅠ市内探索 涼宮ハルヒの24 シーズンⅡそれぞれの休日 涼宮ハルヒの24 シーズンⅢ
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俺がこの学校に入学して早2週間。 今となっちゃあ、あんなに勉強しなくても入れたんじゃないか?と思うものだが、まあ勉強して損したとは思えないからよしとしよう。 ところで俺は今、テニスをやっている。 というのも、部活中だからだ。 ちなみに、このテニス部は男子と女子両方あって、それぞれのコートは用意されている。 名目上はただたんにテニス部であるが、まあ男子テニス部と女子テニス部に分かれていると言っても問題はないだろう。 ただ、顧問の先生が一緒なだけだ。 「はい、じゃあ10分ぐらい休憩」 男子部長が男子部員に言う。 女子のほうはまだやっているようだ。 ちなみに、その中の一人が・・・すっごい実力を発揮している。 涼宮ハルヒ 入学式のときのぶったまげた言葉は、多分冗談だろう。 ただたんに目立ちたがり屋なだけだ。 そのためかどうかは知らんが、いろんな部活に仮入部していってるらしい。 目立ちたがり屋という性格は、嫌われると思うんだがな。 ところで、ここからじゃよく分からないが、5組の教室からこっちを双眼鏡ごしに見ている男がいるが・・・誰だあれ? まあ、そんなことはどうでもいい。 どうせ、俺ではなく、女子のほうだろう。 俺は、いったん近くの椅子に座り、鞄から英語の単語帳を出して勉強しはじめた。 いつからだろうな?こんな、マジメな人間になってしまったのは。 そのおかげで、それなりにいい点がとれるのはいいが、 覚えておきたかった記憶がなくなっているような気がする。 たとえば、小さいころに母さんと行った女風呂の光景とかな。 そういえば、こないだの体育の授業の着替えで、俺や他男子多数が残っているにも関わらず、あそこでものすごい実力を発揮している涼宮ハルヒが、体操服に着替えだしたとき、 俺は思わず見入ってしまった。 そのまま、その映像を脳内保存するつもりだったんだがな、 佐伯さんによって廊下に放り出されたときに、記憶が曖昧になってしまった。 何色だったかな? 黒だったような、赤だったような・・・ いかんいかん、そんなことよりも勉強に集中しなければ。 えっと、『success』は『せいこうする』か。 いかん、またそっち方向に考えてしまった。 「おい、植松」 先輩が話しかけてきながら、俺の隣に座った。 この先輩は、中学のときの部活の先輩でもある。 まあ、中学で、テニス部だったから何人かは知ってる人がいるとは思ったが。 何でこの変態先輩とまた一緒なんだろうな。 「あの子すごくね?男子でも対等で勝負できんだろ」 先輩が言う、あの子とは、涼宮ハルヒのことだった。 まあ、確かにすごいな。 「お前、あの子のこと知ってる?」 「ええ、俺と同じクラスですよ」 「マジで!なんていう名前?」 名前なんて聞いてどうすんだよ・・・とは思いながらも、まあ気持ちは分からなくもないので、 「涼宮ハルヒ・・・だったかな?」と答えておく。 「おいお前、フルネームで覚えてんのかよ!惚れたか?」 「ただたんに、自己紹介のインパクトが強すぎただけですよ」 「なんて言ったんだ?イニシャルのとおり、SでHですとかか?」 「そんなわけないじゃないですか」 せっかく、そっちの方向はさっきから考えないようにしてたのに、そっちの方向に話をもっていこうとしないでください。 一瞬、想像しちゃったじゃないですか。 まあ、とにかく俺は、彼女の自己紹介の言葉を思い出し、簡単に言った。 「普通の人間よりも、宇宙人とかが好き。もしいたらあたしのところに来てくださいって」 「ほー。SFマニアか」 「そうかもしれませんね」 軽く話を流しておく。 今は勉強中です。邪魔しないでください。 えっと、『edge』の読み方は『エッジ』 ・・・チじゃなくてジだぞ。 「俺、ハルヒちゃんと試合してこようかな?」 「部長に怒られますよ」 「なんならお前も道連れだ」 「えっ!ちょ、どういう意味ですか?」 と言ってるときにはもう、先輩に腕を引っ張られていた。 あっ!単語帳が!地面に落ちて汚れた! 「どうもどうも、女子部員のみなさん!今日はいい天気ですね!」 どういう話の始まり方だよ! 「実は、この男が、ぜひそちらのお嬢さんと試合をしてみたいというものでして!」 俺じゃねーよ、そう思ったのは。 「でも、一人じゃ不安なので、ダブルスという形でと思いまして」 先輩と息があうのかは分かりませんがね。 で、その後はしなくてもいいのに、話は順調に進んでいき、 結局、俺と先輩、涼宮ハルヒと誰か女子の先輩でやることになった。 普通に考えたら、こっちのほうが有利だろ。 基本的に、女子より男子のほうが体力があるはずだからな。 話し合いの結果、まずは女子チームが先にサーブ権をもつことになった。 先にサーブするのは、涼宮ハルヒ。レシーブは先輩だ。 涼宮ハルヒはボールをあげ・・・打った。 打たれた球はいったん俺より右側のコートにぶつかり、跳ね返った球を先輩が打ちかえす・・・はずだったんが、 先輩が打った球は空高く飛んでいき、そのまま相手コートの外側に着地してアウトになった。 はっきり言おう。近くで見てよく分かった。 この女ただものじゃねー。 次のレシーブは俺だ。打てるかどうか分からんが、微妙に俺に向けられた先輩の目が怖い。 なんか、アイコンタクトしてるようにも感じるが、何が言いたいのか分かりません。 ところで、涼宮ハルヒがこちらを見る目もどことなく怖い。 そして、先ほどのように涼宮ハルヒはボールを打った。 集中してボールを見る。 よし、打てる。 そんなこと考えてる暇もないぐらい、早いスピードで飛んできたのだが、なんとか相手コートに打ちかえすことはできた。 俺が打ったのが俺から見た左側で、女子の先輩のほうだったためか、その球がこっちのコートに返ってくることはなかった。 涼宮ハルヒはその先輩を睨みつけているよう。 おいおい、先輩を睨むな。 で、試合は続いていって第1ゲームは女子チームの勝ち。 やっぱり、あのサーブはきつい。打ち返すのでせいいっぱいだ。 さて、続いて第2ゲーム。サーブは先輩、レシーブは涼宮ハルヒ。 先輩が球を上にあげ、打った。 そして、その球を涼宮ハルヒは俺のほうに打ち返した。 そして、俺はその球を返す。というより、球から身を守ったといったほうがあってるかもしれん。 真正面にボールが飛んできて、思わずラケットを顔の前に持ってきたからな。 まあ、そのおかげで相手コートのサービスコートに球が入って、そのまま高くとんでいき、なんとか得点を得ることができたんだが。 けれども、第2ゲームも女子チームの勝ち。 どう考えたって、涼宮ハルヒのがんばりのおかげだ。 女子の先輩のほうは、女子の中では強いほうの部類に入るんだろうが、やはり、男子にはかなわないといったところか。 なんとか、サーブを打ち返せるといったところだ。 かくいうこっちも、涼宮ハルヒのサーブをなんとか打ち返せるレベルでしかないんだが。 にしても、あの女、本当に人間か? 宇宙人とか探してるみたいだが、自分がその部類じゃないのか? いや、別に俺は宇宙人を信じてるわけではないんだが。 続いて第3ゲーム。サーブは女子の先輩だ。 ここまで来たら、俺も慣れてきたもので、ようはあの女子の先輩のほうに打てば、球がなかなか返ってこない。返ってきたとしても、強い球じゃない。 涼宮ハルヒに睨まれるが、そう睨まないでくれ。 そんなにずるいやり方じゃないだろ。 ということで、なんとか第3ゲームは男子チーム、つまり俺らの勝ちとなったわけだ。 ここで、気づいたのだが、どうやら女子部員も男子部員も俺らの試合の観戦に夢中になっているよう。 まあ、それなりに面白い試合だとは思うので、分からなくはないが・・・ お前らも、練習しろよ。 さて、第4ゲームだ。 いよいよ俺にサーブ権がまわってきた。 悪いが、サーブには自信があるんだ。 今回も勝たせてもらうぞ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 先ほどからデュースが続いている。 やはり、この涼宮ハルヒはなかなか手ごわいようだ。 さて、実は言うと次に相手チームに得点が入ったら相手チームの勝ちだ。 俺は、ボールを高くあげ、打った。 涼宮ハルヒが打ち返した。 俺は、女子の先輩のほうに打ち返す・・・すると、 「ちょっと、そこ邪魔」 と言って、涼宮ハルヒが、女子の先輩を押しのけて、打ち返してきた。 確かに、そのほうが勝てるかもしれないが、無茶苦茶失礼だぞ。 だけど、そんなこと気にしてる暇はないので、そのまま打ち返す。 「植松がんばれよー!」 誰かの応援してる声が聞こえる・・・ って、先輩!何やってんですか! あなたも参加してくださいよ。 これじゃあ、まるでシングルスじゃないですか。 仕方ないから、そのまま続ける。 やっぱり、涼宮ハルヒの打つ球は強い。 だが、そろそろこの球にも慣れてきた。 そろそろ、この球をうまくコントロールできそうだ。 俺は相手コートのエッジを狙う。 せいこうしてくれ! トン よし!成功した! いや、確かに成功したんだが、そこについたら打ち返せないだろうと考えた俺がバカだったのか、 普通にボールは返され、油断していた俺はラケットにボールをあてたのはいいものの、そのままラケットごと後ろにぶっとばされた。 なんちゅう威力だよ。 そして、部長がそろそろ帰ってこいと言ったため、そこで試合は終わった。 1-3で、女子チームの勝ちだ。 女子に負けたというのにあまりショックをうけないのはなんでだろう? その後、「あたしやめます」 そう言いながら、涼宮ハルヒはトタトタとテニスコートを出て行った。 慌てて、女子の部長達が説得しに行く。 まあ、それだけなら俺も関係ないから別にどうでもよかったんだが・・・ 「テメーのせいで、ハルヒちゃんやめちゃったじゃねーか!」 と、先輩が怒鳴りだした 何で俺のせいなんだよ! 「お前が弱すぎて、気持ちいい終わり方ができなかったから怒って帰っちゃったんだろ!」 だから、あっち方面っぽい言い方言わないでください。 だいたい、先輩も先輩じゃないですか。 「俺は悪くない。お前がもっとテクニシャンな技を見せなかったから」 なんだそりゃ! 「ああいう子はな、普通な人間じゃ物足りないんだよ。もっと上のレベルをだな」 はいはい、どうせ俺は普通ですよ。 「おいお前ら、さっさと戻って来い。ったく、女に負けるとはどういうことだ」 部長まで怒らないでください。 悪いのは全部、この先輩です。 負けたのは、涼宮ハルヒが強すぎるからです。 ったく、この先輩、いつかノー得点で負かしてやる。 ああ!! 英語の単語帳、誰かに踏まれてる!!
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俺はドアを開けた。 「ハルヒ…やっぱりここにいたか。」 「 」 思った通りだった。旧校舎の、俺たちの部室に、SOS団の部室に、こいつはいた。 「 」 窓のそばに立ち、外を眺める少女。 「…ハルヒ。」 呼びかけるが、こちらを振り向く気配はない。 「おい、ハル」 「何しに来た?」 …… 明らかな拒絶。 …覚悟はしてたさ。ハルヒが、覚醒を起こしてぶっ倒れちまった時点でなぁ。言わずもがな、こいつは… 俺の知ってる涼宮ハルヒではない。窓から立ち退き、振り向いたその顔は…無機質な表情そのもの。 記憶喪失にでも遭い、俺が誰だかわからない…そんな虚無感を覚えた。 「お前は…ハルヒじゃないな。」 「 」 『最初の宇宙は無限宇宙だった。この無限宇宙には初めは創造主である神しかいなかった。 始まりもなく終わりもなく、時も空間もなく、形も生命もなかった。このような全くの無の宇宙に 神は初めて有限を生み出した。神が自らを具現化した有限…我々はその存在を 各地の神話や伝説に照らし合わせ、【ソツクナング】と呼んでいる。』 長門の言葉を思い出す。 「これまで何度も世界を破壊し、そのたびに創造してきた張本人…そうだよな?神様…いや、」 …… 「ソツクナングと、そう呼んだ方がいいのか?」 「 」 …… 「 ソツクナング か 懐かしい名前 そうだとして、あなたはどうするつもり?」 「決まってんだろ…この世界の崩壊を…!第四世界の崩壊を今すぐ止めてくれ!!」 「できない相談だとわかっていて わざわざそれを口に?」 淡々とした 冷酷な口調。 …時計を眺める。 23時56分 時間がない…!こいつを説得してる時間など…もはやない…っ! 「…力づくでもお前を止める。」 …… 「まったく、呆れる 力でしか物事を解決できない それが人間 」 ッ!! 「お前に言われたかねえよ!!これからまさに【力】でもって世界を滅ぼそうとする… お前みたいな【邪神】にはな!!もはや神ですらねえ!!」 「 今更お前がこの人間の体をどうしようと 世界の崩壊は止まらない なぜなら、私自身 ここにはいないのだから 」 「何をワケわかんねえことを…ッ!」 …… 『あたしはあくまで神の化身でしかないの。確かに人間の身に投じてはいるけど、 だからといって本来の神が消えてしまったわけじゃない。本当の神はあたしとは別に 宇宙のどこかで存在してるわよ。で、その存在が地球規模の天変地異を引き起こしてるわけ。』 ハルヒが昔言っていた。 …こいつの言うとおりだ。神はここには…いない。 「ハルヒは…」 「 ?」 「ハルヒは…元のハルヒはどこに行った!!?」 そうだ…あいつは言っていたんだ…! 『世界が滅びるったって神はそれを傍観するだけ。でも、地上にいるあたしは知っている… それによって多くの尊い命が奪われ…また、彼らの悲鳴も聞こえた。考えようによっては単なる殺戮ね。 そして、その張本人が自身であることを自覚した直後、これまで何度あたしは発狂しそうになったことか。 人間である以上、最低限の理性はもつもの。…当然の帰結よ。』 『もうね…あたしはこれ以上人々の痛みは見たくない。』 「あいつはな…見たくなんかねえんだよッ!!この世界の人間が死ぬ様なんてな…、 お前の…その体の本来の持ち主である涼宮ハルヒはなぁ!!!」 「だから何?」 「あいつ自身そんなことは微塵も思っちゃいねえ…だから、言うぜ。今すぐ…今すぐ ハルヒの人格を呼び戻せ!!お前が今やろうとしてる暴挙に…あいつはきっと反対する!!」 「 ?呼び戻す必要性が感じられない 」 「そんなこともわかんねえのかよ!!?ハルヒは…元はと言えば涼宮ハルヒは お前の分身のような存在だったはずだ…俺が言いてえのは!!!仮にも分身だと言える そいつの声を… 一方的に封殺しちまってもいいのかって、俺は聞いてんだよッ!!!!」 「この人間のことなど知ったことではない」 躊躇うことなくこいつは言い放った。冷たかった。 『本来の神はとても考えが物質的で無機的で…そして冷酷。』 「そうかよ…じゃあ、この質問にだけは答えろよ…!!ハルヒをどこにやった!!?」 「別にどこにも ただ言えるのは 彼女がこの体に意識を宿すことは二度とないってこと 」 …… 今…何と言った? 「てめぇ…!!今の…冗談じゃ済まさねえぞ!!?」 「第三世界崩壊直後、私に牙をむき 本来担うはずの神としての業務を悉く放棄してきたこの人間を、 私は許さない 存在意義を絶ったこの人間を、私は許さない この人間の本来の人格には 消えてもらう」 「……ッ!」 俺はある種の恐怖を覚えた こいつは自分以外の存在を 単なる道具としか思っちゃいない …時計を見る。 23時58分を過ぎている… 時間が…ない!!! …ここまで真剣なのは俺の人生の中で…おそらく最初で最後だろう。思考回路が焼き切れるのではないか… そのくらい俺は真剣だった。真剣に考えていた。どうすれば世界が助かるかを。どうすれば…!? とりあえず落ち着く必要がある。さっきこいつが…ソツクナングが言っていたことを思い出せ… 『今更お前がこの人間の体をどうしようと、世界の崩壊は止まらない なぜなら私自身 ここにはいないのだから』 つまり、俺が今この場で側にある椅子を持ち上げ…ハルヒ(の姿をしたソツクナング)の頭めがけ、 殴りつけたとする。その場合、ハルヒは気絶、ないしは死に陥る。だが、そうしたところで… この世界の崩壊は止まらない。 …まあ、万一にもそれはありえん話だがな…。いくら意識が神に乗っ取られてようと、 この体が涼宮ハルヒ本人のものであることは…疑いようのない事実…!!気絶ならまだいい! 誤って殺したりでもしたら…ッ!一体どうすんだ!!?そんなことをしたらハルヒは永久に帰ってこない… そんなリスクを犯すはずがない…!! どちらにせよ事態の好転は望めない。 じゃあどうすんだ!? …てっとり早いのは、宇宙のどっかに存在する神に対し…直接干渉してやること。 …… 一人間である俺が どうやって?? …時計を見る --------------------------------------23時59分 ダメだ。俺は…このまま何もせずに終わるのか!?もう世界は…どうにもならねえのか!? みんな…ゴメン… …… 『…キョン君、僕は信じてますよ。必ず世界を救ってくれる…とね。』 『キョン君…!!どうか…無事帰ってきてくださいね!涼宮さんと一緒に!!』 『何があっても決してあきらめないで。あなたならきっとできる。』 !! 俺は…みんなと約束した。できるできないの問題じゃない!!やらなきゃいけない…!! 俺は…最後まで絶対あきらめない!!…落ち着け、落ち着いてもう一度冷静になって考えてみろ…ッ! …そもそもである。 『今更お前がこの人間の体をどうしようと、世界の崩壊は止まらない なぜなら私自身 ここにはいないのだから』 この言葉がどことなくひっかかるのは …俺の気のせいか? ハルヒの覚醒、即ちハルヒがハルヒでなくなったとき。それこそが世界崩壊へのカウントダウンだった。 裏を返せば、昨日ハルヒが倒れるまでの間、そのカウントダウンとやらは起きなかったということになる。 世界崩壊は誰の意志?誰の仕業?言うまでもなく、今目の前でハルヒを操っている神そのものだ。 つまり、神はハルヒの覚醒無しでは世界崩壊は成し得なかったはず。 …覚醒とは何だ?ハルヒはどうなった? 【前時代の記憶を取り戻す。】 これは俺のみにならず、長門や古泉たちとの共通認識でもあった。 だが…今のハルヒは違う。記憶が戻ったとか、そういう次元の問題ではない。 目の前のこのハルヒには【ハルヒ】としての意識がそもそも存在していない。自我が存在していない。 それもそのはず…神がそうするよう仕組んだからである。言わば、神の操り人形といったところか。 …俺たちの覚醒認識が間違っていたのか?だが、長門・古泉が主張していたあたり、安易にそうとも思えない。 1つ仮説を立ててみる。仮に、俺たちの認識は正しかったとする。 そうである場合、今のこの現状はどう説明すればいい? …思いつく答えは1つ。それは、記憶が戻った直後、神の介入により意識を絶たれたというもの。 第四世界崩壊のためには涼宮ハルヒの意識を奪い、神の監視下、コントロール下に置く必要があった。 …要約すればこういうことだろうか。 しかし、なぜそんなことをする必要が?正常状態のハルヒを放置しておくことで、神に何か不都合でも…? 「後 数秒で地球は公転周期上、完全にフォトンベルトに突入する これで第四世界も終わり 」 …数秒だと!?すぐさま腕時計を確認し…!?もう10秒もない…!! ッ!!! くそッ!!後もう少しで…後もう少しで何かわかりそうだったってのに!!! 9 …ッ!!俺はあきらめない…!!あきらめたら…何より朝比奈さんの死はどうなる!? 俺に言葉を託して死んだ朝比奈さんはどうなる!?これじゃ単なる無駄死にじゃないか!!! 8 『たぶ…ん、この世界は…守られる…第五…世界ももう…すぐ消滅…みん…ないなくな…る』 7 朝比奈さんは…あのとき何を根拠にこんなことを言っていたんだ…!?? あのとき…彼女は何を思ってこれを口にした?? 6 …俺は、あのとき覚悟を見せつけたじゃないか 5 【この朝比奈さんが…自分のいた世界を守るのに命懸けなのなら。俺だってそうだろう…!? 状況的には全く同じはずだろう!?俺は自分のいるこの世界を、人々を、家族を、友人を、 …ハルヒを!守りたい…!!!】 4 朝比奈さんが俺の覚悟を垣間見たのだとしたら…彼女は俺に一体何を期待した? 世界の人々?家族?友人?いや…違う 3 『キョン…君…、すずみ…やさ…んを…大…切に…ね』 2 彼女の最期の言葉が それを物語っていた 1 「 」 「 」 「!?」 「…何を し 計画 計画 が あ 、あああ !? ああああああああああああああああ!!!!!!」 12月2日0時0分 第四世界滅亡 その筋書きが破綻してしまったせいか -----------神は発狂し始めた …… 俺は今 一体何をしたのだろうか …反射だ 小学校、あるいは中学の理科の授業にて、こんな言葉を聞いた覚えはないだろうか? 特定の刺激に対して意識とは無関係に引き起こされる反応……生物学的反射の一般定義だ。 熱いヤカンに指が触れ、熱い!と感じた時には、すでに指は手元へと引っこんでいた。 わかりやすい反射の一例としては、例えばこういうものがある。 …厳密に言えば、今のは反射ではないのかもしれない。まあ、この際それはどうでもいい。 …… 机にもたれかかり、必死に倒れまいとするハルヒ。だが、それも時間の問題のように見えた。 それもそのはず…麻酔を叩きこまれて平然としてられる人間など、いるはずがない。 俺は涼宮ハルヒめがけ 麻酔銃をぶっ放していた 「意識 意識がぁ っ!」 ついに立っていられなくなったのか。床に塞ぎ込み、頭を抱えるハルヒ。 …麻酔銃?なぜ俺は、この局面でこれを使用したのか? …… …なるほど、 【正常状態のハルヒを放置しておくことで、神に何か不都合でも…?】 この問いに対する答えを、俺は知らぬ間に見つけてしまっていたらしい。…逆を考えてみればいい。 記憶を取り戻したということは、即ちその瞬間において、ハルヒが神と意識を共有することを意味する。 『だってあたしは神の分身だもの。つまり、神が考えてることが同時に今あたしが考えていること。』 本人の言葉通り、ハルヒはこれから神がしようとしていることを…瞬時に把握する。 神がこれからすることとは…言わずもがな、俺たちが生きるこの世界の破壊である。 …それを知ったハルヒはどうするだろうか? 『世界が滅びるったって神はそれを傍観するだけ。でも、地上にいるあたしは知っている… それによって多くの尊い命が奪われ…また、彼らの悲鳴も聞こえた。考えようによっては単なる殺戮ね。 そして、その張本人が自身であることを自覚した直後、これまで何度あたしは発狂しそうになったことか。』 『もうね…あたしはこれ以上人々の痛みは見たくない。』 極めつけは…第一、第二、第三、第四と史実に準え、次々に世界が滅んでいく様を… 見せつけられた一昨日の夢の中で…!消えゆく夢の中で、かすかに聞こえてきた、ハルヒの言葉…! 『嫌…っ!嫌!!あたしは…こんなことしたくない…!!!!』 もはや自明であろう。ハルヒが…決してこの状況を望んではいない、ということは。 話は次の段階へと進む。 望む望まないは別とし、ハルヒの中に何かしらの強固な意志が生まれた場合… 結果として【何】が起きる?…これが最も重要である。神はそれを恐れてる。 だからこそ、神は涼宮ハルヒの自由意思を阻害すべく、彼女を自らの監視下に置く必要があった。 以前、俺はハルヒに『神をやめて一人の少女、普通の人間として生きたいと思ったことはないのか?』 と提案したことがある。しかし、ハルヒはすぐには首を縦には振らなかった。その理由というのが 『化身である以上、これからもずっと神の意志に束縛されて生きていくのは自明で…。』 という思い込みにあった。自身が好きなように生きることを放棄した、ある種の諦観とも言うべきか。 その後の俺の説得により、ハルヒは立ち直った。これまでのステレオタイプから抜け出した。 結果、ハルヒは転生という手段に打って出る。代行者としての自分を捨て、来たる第四世界で 1人の人間として----------、自身の意志で生きていくために。 『やっぱり物事ってのはやってみるに越したことはないと思ったわ…あたしの潜在能力って案外凄かったみたい。』 …試みは見事に成功した。画期的とも言える瞬間だった。 つまり 涼 宮 ハ ル ヒ の 力 の み が 神 に 干 渉 で き る 唯 一 の 手 段 俺が言いたかったのはこの一点である。 ならば、ハルヒが記憶を取り戻した状態で、万が一にも神に対する強い反駁精神を発動させでもしたら 一体どうなるか?察しの通り、神は自らの計画に支障をきたすことを…覚悟せねばならぬ事態へと発展する。 仮にハルヒのそれが潜在的なものであったとしても、第四世界の崩壊にあたって全くのイレギュラー因子が 無いとは…言い切れない。神からすれば…これほど不気味な存在もいないだろう…? 言うことを聞いてくれない自身の分身など、脅威以外の何物でもないからだ。 言うのは二度目だが、ただの凡人である俺のような一人間には 宇宙のどこかに在する神に対し、どうこうしてやることなど…できるはずもない。 だが…ハルヒには…!涼宮ハルヒにはそれができる!! …… 『キョン…君…、すずみ…やさ…んを…大…切に…ね』 朝比奈さん…ありがとう。貴方が最期に言い残してくれた言葉のおかげで…、 俺は救われました。あの言葉の意味が…ようやくわかりましたよ。 …そうとわかれば話は早い。俺がやるべきこと…それは ハルヒが【ハルヒ】として自我を確立してられる環境を作ってやること…!! その一言に尽きる。残念ながら、現在目の前にて立ち塞がるハルヒは…ハルヒであって【ハルヒ】ではない。 神の息がかかった彼女を、一体どうすれば正常な状態に戻してやれるのか!?最大の難問だった。 『今更お前がこの人間の体をどうしようと 世界の崩壊は止まらない 』 こいつの言っていることは一理ある。 例えば、俺がハルヒに対し…素手や足で殴る蹴るなどし軽傷を負わせたとする。しかしそうしたところで… それはあくまで、言葉通り軽い傷でしかない。そんな程度の低いアクションを加えたところで ハルヒが神の監視下から逃れるとは…とても思えない。依然、意識は神に管轄されたままだろう…。 かと言って、重傷を負わせれば良いという問題でもない。それこそ暴論である…。 頭を殴りつけたり等して、万一ハルヒに永久に意識が戻らなかったらどうするつもりだ…!? 仮に戻ったところで、そんな重体な体で…どこに神に対し、憤る余裕があるというのか!?? 痛みが先行してそれどころではないのは…言うまでもないはずだ。 では、どうすればいいのか?神に憑依された表層意識を払拭するには… どうすればいいのか??単に、何か強い衝撃でも与え意識を失わせればいいのか?? …もちろん、暴力手段をもって身体に重傷を負わせる手法は…論外である。 …… 『麻酔銃…ですからね。人を殺すための道具ではないんですよ。そう言えば、わかりますよね?』 俺は賭けに出ることにした。 麻 酔 を も っ て 意 識 を 絶 つ 意識が揺らぐ一瞬の隙こそ、ハルヒが現状復帰できる最初にして最後の機会。俺はそう確信した。 …ああ、自分でもわかってるさ。これは賭けってレベルじゃねえ。 めちゃくちゃだ…大博打だ…それ以外に言いようがない。 …… あまりに不安要素が大きいのもわかってる。まず根本的な問題として麻酔ごときに、果たして神に隙が 生まれるのかどうか…?仮に生まれたとして、一瞬という僅かな時間でハルヒは意識を取り戻せるのか…?? 麻酔自体の効力もいまいちわからない。軽傷と同じ部類の衝撃性ならほとんど意味を成さない。 かと言って重傷すぎても困る。深い即効性の昏睡だと、いずれにしろハルヒは戻ってこれない。 だが、今はこれしか頼れる方法がなかった。何かもっと、他に確実性のある方法はないのか!? と、何度も何度も思案した。こんな危険な橋、誰が好き好んで渡るものか…ッ!! しかし…考えに考え抜いた挙句、どうしてもこれ以外には思い浮かばなかった。 だから…敢えて俺は信じたい。これが現状における最良の手段だったと。 俺は涼宮ハルヒめがけ、引き金をひいたんだ。 …そして、先ほどの冒頭に戻る。 「ぁあ くっ っ!」 今にも意識を失いそうな少女がいた。 …… 時刻は0時1分 窓から外を眺める。…さっきと何ら変わったところはない。 まだ油断はできない。だが、一つだけ言えることがある。それは 12月2日0時0分世界崩壊 回避した 12月2日0時0分世界崩壊 確かに…回避した…!!少なくとも、この時間帯における世界崩壊は免れた…!! これはつまり、神への干渉に成功したということ。もっと言えば、神に反駁すべく ハルヒの自我が表層意識に現れ始めたという証拠。 …俺の博打も捨てたもんじゃなかったらしい。 …… 古泉がくれたこの麻酔銃。結果として、俺は朝比奈さんは救えなかった。 だからこそ失敗は許されなかった…!!ハルヒだけは…なんとしても助けたかったから!! 「…、キョン…ッ」 …!? 急にハルヒの声色が変わった。…まさか 「ハルヒ…ハルヒなのか!!?」 すぐさま俺はハルヒの元へと近寄る。 「ふふっ…まさか、あんたが銃…それも麻酔銃なんてものを使うなんてね…、驚いちゃった。」 「ハルヒ!!お前…大丈夫か!?」 「…、大丈夫なわけないでしょ…!誰のせいで今体が…痺れてると思ってんの…!?」 そうだったな…すまん、ハルヒ。 「別に…落ち込まなくていいわよ。それしか…良い方法がなかっ…たんだろうし…。」 所々ハルヒの言葉が途切れているのがわかる。…これも麻酔のせいか。 「よく…戻ってこれたな…。」 「…え?」 「麻酔によるショックで神が動揺したのはほんの一瞬だったはず…その短時間で よく意識を取り戻せたなと言ってるんだ…。俺が麻酔という手段に訴えたことに お前が驚いてるように、俺も…お前の素早い復帰には心底驚いてるとこなんだ。」 「…別にそんなにおかしなことでもないわ。ただ、一瞬の隙さえあればあたしはよかった。 隙さえあれば、すぐにでも神と…取って代わるつもりだった…!」 「…??どういうことだ?お前…意識がなかったんじゃ…?」 「…それは違うわ。意識はあった。ただ…意識があっても、感情や仕草を表層に出すことが… できなかった。これほど歯痒い思いもなかった…!言わば、神に抑えつけられた状態ね… こればかりはあたしではどうすることも…できなかった。…操り人形のまま12月2日を迎えようとした時には… 正直もうダメだと思った…だから、必死に心の中で叫んでた…! 【キョン!!何ボサっとしてんの!?さっさとあたしを助けなさい!!】…ってね。」 「…まさか、お前があのときそんなことを思ってたとはな。俺は、その期待に応えることはできたか?」 「結果的にはね…さすがに、麻酔を使ってくるとは……思わなかったけど。」 「…そりゃそうだよな。」 「でも、おかげであたしは助かった…あんたの予想外の行動に、神は酷く動揺した…その隙をついて あたしは…神に、一気に反転攻勢をかけた…!それもあって神は…世界崩壊を、中断せざるをえなくなった…。」 …… 今更ながら驚く。 俺があのとき…世界を救うことで、頭を試行錯誤したり躍起になっていた中で…こいつはこいつで、 世界を救うことで必死だったんだ…!!確かに、そうでもなければ…麻酔をかけた直後に世界崩壊を 止めさせることなど、普通に考えればできるはずもない…ハルヒのとっさの反応があってこその芸当か。 …ハルヒには感謝せねばならない。 「…それで、全て思い出したのか?」 「…ええ、おかげ様でね…。あたしが神の代行者として日々奔走していたってことも…、 そして、第三世界の終わりで…あんたと出会ってたってこともね…。」 「…そうか。」 「まさか、またこうしてあんたと出会うときが来るなんてね… もっとも、あんたは第三世界でのことなんて…覚えてないでしょうけど…。」 「いや、しっかりと覚えてるぜハルヒ。」 「…どうして?転生した人間が前世の記憶を取り戻すなんてこと、あるわけ…」 「夢を見たんだよ…昨日な。船上でお前と…いろいろと話してた夢をな。お前は気付いてないのかもしれんが、 無意識の内に力を使って俺に過去の記憶を覗かせた…古泉や長門はそう分析してたぜ。俺もそう思ってる。」 「…変な話ね…だって、あんたってあたしと同じく転生してきたんだから…厳密に言えば異世界人的扱い… になるのよね?なら…そんなキョンにあたしが干渉することなんて…本来ならできるはずが…。」 …!! 確かに…ハルヒの言うとおりじゃないか??…じゃぁ、あの夢は一体?? 「…ふふっ、もしかしたら…あの世界のあんたが、それを知らせたのかもね…。」 「お…俺が!?そんなことが可能なのか??」 「…確かなとこはよくわかんないけどね…でもね、あたしはそう思うの。だって…そうでしょう? あんたの記憶は…キョンにしかわからないもの。キョンしか知らないんだもの…。」 …… 【お前】が…見せてくれたのか?世界の危機を察して…わざわざ俺に知らせに来てくれたってのか…? …夢から覚めた後、俺の問いかけに対し、長門・古泉は『ハルヒに異変はない。』と言っていた。 あれは…本当だったってわけか?俺の代わりにハルヒを守ってやれって、そういうことだったのか? 【お前】も姿が見えないってだけで…俺たちと一緒に、必死に戦ってくれてたのか…?実際のところはわからない。 …… 「…あたしね、ずっとキョンに会いたかった…だから…っ!もっと話したいけど 残念だけど、そうもいかないみたい…この世界を…なんとかしなくちゃ…ね。」 「俺も…また会えて嬉しい。過去の俺も、再会できてさぞかし喜んでると思う。 俺だって話したいのは山々…だが、まずはこの危機を乗り切らなくちゃな。」 そう、まだ終わっていない。 12月2日0時0分世界滅亡 確かにこれは回避した。だからといって、第四世界崩壊という筋書き自体が消えてしまったわけではない。 この回避はおそらく一時的なもの…12月2日0時0分という定刻が先延ばしされたにすぎない。 …当然だろう。地球崩壊を企む張本人が宇宙のどこかで、いまだその遂行に励んでいるのだから。 極論を言えば、あと数分で再び世界が消滅の危機にさらされる可能性だってある。 「…ハルヒ。次に地球がフォトンベルトに入る時間帯は…いつかわかるか??」 「…後、20分もしないうちに突入よ…。」 「20分だと!?」 どうやら、俺がさっき言ったことは極論ではなかったらしい。 「畜生…!一体どうすれば」 「キョン…あたしちょっと…やばい…かも」 「…ハルヒ!?どうした!?」 「麻酔が…まわって…きたみたい」 「ッ!!」 麻酔銃を使った代償が…ここにきて現れ始めた。そうなることは覚悟していたが…っ! 「ハルヒ!!お前の…お前のその願望実現の能力で…!その麻酔を取り除けないか…!?」 「…残念だけど…、それはできない…。」 「どうしてだ!?」 「確かに…、麻酔を強く拒否すれば…能力は発動…するでしょうね…でも、今はそんな些細なことに力を 削ぎたくはないわ…キョンも…わかってるんでしょ…?神に対抗できる唯一の手段が…あたしだけって…ことに」 「…!」 「それでも…万全な状態でも、あたしは神の力には遠く及ばない…はず。ましてや…神を倒すともなれば…」 「!?神を…倒すのか!?」 「だって、そうでしょう!!?じゃなきゃぁ、さっきと同じ…。 一時的に防いだところで、世界が危機に見舞われていることには…変わりないわッ!! なら、その根源である神そのものが消滅しない限り…世界は神の魔の手からは、永遠に逃れられない…!! だから…少しでも、少しでも力を温存しとかなくちゃならない…!そうじゃなきゃ、世界は…!!」 …… 俺から言うことは何もない… ハルヒの覚悟は本物だ…! 「…それで頑張ったとしてだな…!後どれくらいもちそうなんだ!?」 「わからない……、もって5分…ってとこかしら…、」 5分 …… 5分 胸に突き刺さる このわずかな時間の中で…ハルヒは神を倒さなくちゃならない。 止めるならまだしも…神を倒す!?神の存在そのものを…消す!?そんなこと… そんなことが本当にできるのか…!?そんなことが、本当に可能なのかっ!!? 「あたしは…神の消滅を強く願う…っ。強く願って…それを実現させる…! それが…あたしの能力だったものね…。あたしが…あたしがやらなくちゃ…っ」 俺は…何をやってるんだ…? 確かに、状況は絶望的だろう。だが…それでも尚あきらめず、神に立ち向かおうとしてる 当の本人を前に俺は… 一体何をやってる…?何を勝手に…沈んでる…? …最低だ。俺は。 …… 『だけどね、あくまであたしの体は人間。だから力的には 本体である神を超えることなんて絶対に不可能なの…当たり前だけど。』 『……』 『転生はできそうなの。でも完全には…いかないみたい、残念だけどね。 今あたしがもってる人間らしからぬ能力も…おそらく一部は受け継がれることになると思う。 それどころか神の操作で、今以上により強大になっている恐れだってある。』 『……』 『だから』 『言わんとしていることはわかるさ、そこまで俺も鈍くない。それでもし 何か悪いことが起こったって…そんときはその世界の俺がきっとハルヒを助けに来るはずだ… だからさ、お前は安心して転生に専念してりゃいいんだよ。』 『キョン…ありがとう。』 突然のフラッシュバック …… そうだ…俺はあのとき、昔ハルヒに言ったじゃねえか…!?助けてやるって!!!! あの世界の俺は…確かにそう言ったじゃねえか!!!? 「ハルヒ…!」 「…!?キョン…!?」 俺は…。座り込んでいるハルヒの手を…力強く握ってやった。 「ハルヒ、お前は…決して一人で戦ってるわけじゃない…!」 「…?」 「ハルヒ…実はな、さっきの麻酔銃は…古泉がくれたもんだったんだよ。」 「…古泉君が。」 「それとな…俺が今こうやって生きてるのも…長門と朝比奈さんのおかげなんだ。」 「…有希…みくるちゃん…。」 「みんなの力があって…今ここに俺とハルヒがいる。どうか…、それを忘れないでくれ!!」 「…!!」 「みんなここにいる…古泉、長門、朝比奈さん…みんな頑張ってる!!当たり前だろう!? SOS団は…いつも一緒だったじゃねえか!!それは…それは、団長だったお前が何より… 誰よりもそれを知っているはずだ!!!」 「キョン…っ」 「残念ながら一人間にすぎない俺には…こうやってお前の手を握っておくことくらいしか…できない。 …けどな、それで少しでもお前の気持ちが安らぐのなら…! 【SOS団みんながお前についてる。】、その証を少しでも感じ、不安が拭えてくれるのなら…! 俺も、お前の横で…必死に、必死に祈り続けてやる!!決してお前を一人にはさせねえ!!!!」 「キョン……ッ!!!」 …… 「そうね…あたしには…みんながいる…!!古泉君、有希、みくるちゃん…そしてキョン…!」 …… 「あたしね…正直言うと、半ばあきらめてたの…神なんかに勝てるわけない…ってね… でも…、あたしはキョンから勇気をもらった…!それだけで…それだけであたしは頑張れる…!! だから…あたしが意識を失わないよう…!強く、強く…!手を、握りしめていてね…。キョン…っ。」 「…ああ、もちろんだ。」 一体どれだけの時間が経過しただろう。 「キョン…」 「…何だ?」 「神の声が…聞こえなくなっ…たよ…」 「…俺はな、お前にならできると思ってた。」 「一体…、どれくらい…、時間…経った…かな?」 「…ちょうど5分ってとこだな。」 いまだにその5分というのが信じられん 俺には無限もの時間が去ってくような、そういう感覚に囚われていたんだ 「あたし…頑張っ…た…よね?」 「ああ、お前は十分に頑張ったさ…、よくここまで耐えたと思う。」 「…神の…声が…聞こえない…」 「…やったな…ハルヒ…ッ!!」 「声が…聞こえ…ない…」 神の化身である涼宮ハルヒには神の声が聞こえる 神が何を考えているかがわかる その声が----------------------------聞こえなくなった …… つまり、神は消滅した はっきり言おう。信じられない。わずか数分で…ハルヒは神を凌駕した。本当に凌駕してしまった。 予防線を張っておく あくまで可能性でしかない。神が本当に消えたかどうかなんて、一体誰がどうやって確認できる?? …… それでも俺は…ハルヒに対し、素直におめでとうと言いたかった。 死力を尽くした本人に…俺は誠意をもって労いの言葉をかけてやりたい。 「ハルヒ!おめで…」 …? 「ハル…ヒ?」 …いつからだろうか?ハルヒの体が…光っていた。 「ははっ…力を…使い果たしちゃった…みたい。」 …… デジャヴだった。この光景を…俺はどこかで見た。…そう、第三世界終焉時の夜。 海岸でハルヒと出会ったとき。あのときも彼女は…確か光り輝いていたんだ。 「転生のときと同じ…最後の灯火ってやつ?能力が無くなっちゃうときって、いつもこうなるのよ。 あのときもあたしは神に抗い、力を使い果たしたんだっけ…今のこの状況と全く同じね。」 …ハルヒのしゃべり方に、俺はどことなく違和感を覚えた。 「ハルヒ…お前、麻酔は…?」 「……」 …… 「状況は転生したときと全く同じ。つまり、これからあたしの記憶は永遠に失われる… だから、せめて最期くらいはあんたと、万全の状態で接しておきたかった…。 そう強く思ってたら…いつのまにか麻酔はとれてた。…そういうとこかしら。」 今、何と言った? 「ちょっと待て…記憶が失われるって…?どういうことだ!?」 「慌てないで。ただ、三日前のあたしに戻る…それだけの話よ。」 …… 「神に纏わる記憶が総じて消されるってことか…?」 「そういうことね。おそらく、明日にでもなれば…神だの第四世界だのそういうことを一切知らない、 ちょうど三日前の状態のあたしがいる…と思うわ。ただ、その明日が来ればの話だけど…。 本当に神が消えていれば…ね。」 「……」 ハルヒもハルヒで自覚していたらしい。神が消えたというのは…あくまで可能性でしかないということを。 …… 「…いずれにしろ、もう【お前】とは会えないってことか…?」 「ええ…残念だけど。でも、あたしはそれでいいと思う… 普通の、一人の少女として生きるのであれば、こんな記憶…邪魔以外の何物でもないもの。」 このハルヒとは二度と会えない …会えない …… なんだ?この喉につっかかる妙な感覚は…? …… 俺は…こいつに 何か言わなくちゃいけないことがあるんじゃなかったか…? ------------------------------------------------------------------------------ あれ…どうして俺は泣いてるんだ?確証はないが…遠い未来再びハルヒと会えるかもしれないじゃないか。 ああ、わかってはいるさ。会えるのは【未来の俺】であって今の俺じゃない。問題は会えるかどうかじゃない。 今の俺が…ハルヒに『この思い』を伝えられなかったこと…それが悔やんでも悔やみきれない。 そうか、だから俺は泣いているのか。ようやく理解した。 …… 「ハルヒ……ハル…ヒ………」 いくら叫んだってもう伝わりはしない。聞こえもしない。見ることも、触れることもできない。 …… 遠い未来の俺よ… 一つ頼みごとを聞いてはくれねえか。 もしお前がハルヒと出会うようなときが来れば… そんときは俺の代わりに『この思い』 ハルヒに伝えてはくれねえかな? 俺は第四世界の出発点とも言えるこの時代で精一杯生き抜いて…そして寿命を終える。 だから…遠い未来の俺よ、お前もお前でその時代を全うして生きろよな。 ハルヒと一緒に。 ------------------------------------------------------------------------------ そうだったよな?あのときの俺… 「ハルヒ…。お前に、伝えなくちゃいけないことがある。」 「…キョン?」 「今から言うことはな、あの世界の俺がお前に…言いそびれたことだよ…。」 「…?」 「でもな、それと同時に…それは、今の俺が思ってることでもある。…じゃあ、言うぞ。」 「俺は…お前のことが ……、大好きだ。」 「!!」 …… 「……」 「……、」 「……」 「……、、」 …ハルヒ? …… おい、どうしたハル …… 泣い…てる…? …… 「…まさか、最後の最後で、あんたの口からそんなこと言葉…聞くなんてね…。」 「……」 「最期にその言葉を聞けたあたしは…とても、幸せな【人間】だと思った…!」 「ハルヒ…。」 「キョン…覚えてる?第三世界での別れ際に…あたしが言ったことを。あのときも、あたしは幸せだと言った…、 でも…違うの…っ!あのときの『幸せ』とは…違う…!!本当に…嬉しいの…っ!」 …… 『【神の代行者】としての最期に、あなたのような人間に出会えてあたしは幸せだったわ…!』 …… 「ははっ…あたし、何泣いてんだろう…?また、ハルヒはキョンに会えるっていうのにね…」 「……」 「キョン…今の言葉、ハルヒにも…ちゃんと言いなさいよ…? あたしと…約束しなさい…!これは…団長命令……よ……、」 …そう言い残し、ハルヒは泣き崩れた。 「…団長命令に逆らう部員が 一体どこにいるってんだよ…?」 俺はハルヒを…強く、強く、抱きしめてやった。この華奢な体を…壊してしまうくらいに強く。 …不思議なことに、ハルヒは痛いとは言わなかった。…変な話だ。こんなにも強く抱きしめてるってのに…! 「キョン…あたしはあんたのことが…好きだった!大好きだった…!!」 「…そう言ってもらえて、あのときの俺も…さぞかし嬉しいだろうよ。」 「何…カッコつけてんのよ…?あんただって…嬉しいくせに…っ」 「…当たり前だろ。」 「……」 ずっとこうしていたい。俺とハルヒの間に…距離はなかった。 「…あたしね。」 ハルヒが口を開く。それは…独白ともいえる内容だった。 「…地球が誕生してから、やがて人類が生まれた…その人類を統括するための仲介者として あたしは生まれた…。やがて、人々はあたしを神と見なし、敬うようになった…。神は平和を望んだ、 だからあたしも平和を望んだ…けれど、それも長くは続かなかった…人間たちは互いを謗り合い、傷付け、 憎み…やがて戦争が起こった。神は怒った…結果、世界は滅ぼされた。けれど、そのときはまだあたしは 何も感じなかった…感情がなかったのね。けれど、しだいに人間や動物との交流が進んでいくうちに… そういう神の行いを、あたしは暴挙だと捉えるようになった。でも…それでもあたしは自分からは 動こうとはしなかった…神の仰せのままに従うのが、あたしの宿命だったから…、天命だったから…、 運命だったから…、そう強く あたしは信じていた…」 …… 「あんたがいなかったら…あたしって、一体どうなってたのかしら? いまだに神の代行とやらに追われ…日々奔走してたりしてね。」 「…そりゃなんとも、難儀な話だな。」 「あたしね、あんたと会えて本当によかったと思ってる。 だって、あんたがいなきゃ…今のあたしはいなかったんだもんね…。」 …… 「…時間…ね、」 「ついに…きたのか…。」 「ええ…あと1分もしないうちに、あたしの記憶は消されるわ。 神としての記憶も、滅んだ世界の記憶も、そして…昨日今日あった出来事も含めて全部…ね。」 「そうか…寂しくなるな。」 「何バカなこと言ってんのよ。ちゃんとハルヒは健在よ!」 「そんくらいわかってるぜ。」 「なら、紛らわしいこと言わないの。」 「……」 「な、何よ?」 「ハルヒ…」 …… 「今まで…ホント大変な人生だったろう…?よく、ここまで頑張ったな…。」 「……」 「でも、それも今日で終わりだ。次の朝からはお前は…今度こそ、本当の意味で 普通の人間としての生活を送れるようになる。その人生を…これまで苦労した分、どうか楽しんで生きてくれよ。」 「…もちろん、それはあんたがするのよね?」 「…?俺が…お前を楽しませるってことか…?」 「そゆこと。」 「まったく…お前には敵わんな。」 「当然よ!あたしを誰だと思ってんの!?」 「…団長様だろ。で、俺は雑用係りの平団員というわけだ。」 「わかってるのなら、それでいいわ!」 「どうか、ハルヒをよろしくね…っ」 直感で察した。たぶんこれが…このハルヒの最期の言葉なんだろうと。 …ハルヒは目を閉じたまま、顔をこちらに向けている。 彼女が何を言わんとしてるのか…俺にはすぐわかった。 「ハルヒ…また会おうな。」 そう言って俺はハルヒと…静かに口づけを交わした。 …… その瞬間だったろうか。辺りの光景が目まぐるしく変わりだした。 以前、ハルヒと二人 閉鎖空間に閉じ込められた時も…こんな感じだっただろうか。 閉鎖空間から出た後、俺たちはどうなってるだろう 世界は?天災は?神は? …… いつもと変わらない日常風景が広がる世界 凄惨かつ荒廃した光景が広がる世界 …俺たちが元の世界に戻った直後に目にする景色は、果たしてどちらか 前者であることを信じたい …俺は 意識を失った
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登録日:2012/06/01 Fri 19 36 09 更新日:2023/01/28 Sat 10 56 35NEW! 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 シスコン パンジー←頭の中的な意味で ヤンデレ 外道 愛されないクズ 時間犯罪者 朝比奈みくる 未来人 歴史改変 涼宮ハルヒ 涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの陰謀 無愛想 犯罪者 藤原 過去改変 涼宮ハルヒシリーズの登場人物。 みくる(小)とは違う未来から来た未来人。 現代に来ている目的は不明だが、みくる(大)からの命令を遂行していたキョンたちを明確に妨害することはない(多少の邪魔はする)。 性格は陰湿で少々周りを見下した発言が多い。特に現代人に対しては「未来に踊らされている」などと評しキョンから敵意を持たれている。 固有名詞に対し独自の考えを持っているらしく、他人を名前で呼ぶことを無意味であるとしている。 みくる(小)曰わく「悪い人ではなさそう」。 ◆『陰謀』 初登場巻。パンジーの植え込みで探し物をしていたキョンとみくる(小)の前に突如現れる。 みくるのことを一方的に知っていたようで、いきなり呼び捨てにした。みくる(大)は彼の存在を認知していた模様。 終盤では橘京子率いる超能力者組織に指示する形で何故かみくるを誘拐。本人はこれが失敗することを予め知っていた様子。 余談だが、この時点では名前が不明だったため一部のファンからは暫定的に「パンジー」と呼ばれていた。 ◆『分裂』 橘が無理やり作った「佐々木が本来涼宮ハルヒの持つ能力を持つはずだった」とする組織のメンバーにされる。 この巻でようやく『藤原』と名乗ったがキョンの考えによると偽名らしい。一部のファンの間で「パンジー藤原」という愛称が誕生した瞬間である。 ハルヒの能力に対し「所有者ではなく能力そのものが重要である」との見解を示した。 ◆『驚愕』 ※未読の方注意 現代に来た目的が歴史の改ざんであることが判明。 周防九曜と手を組み、佐々木と橘を利用しハルヒと長門を人質にする形で佐々木にハルヒの能力を移植するが、 そのことを無意識下で事前に察知したハルヒの能力により妨害される。 最終的に藤原の未来と現代との間に断層が生じ藤原は二度と現代に時間遡航することができなくなった。 ちなみに歴史の改ざんをしようとした理由は姉を失った歴史を過去ごと変えるため。 その姉の正体はみくる(大)なのだが、みくる(小)の未来から来ているみくる(大)によると「私に弟はいない」とのこと。 ◆涼宮ハルヒちゃんの憂鬱 8巻から佐々木、橘、九曜と共に登場。 キョンによるとデリケートな性格らしく初っ端から弄られ役化している。 「驚愕」ネタを解禁した9巻ではシスコンキャラとしての地位を確立した(キャラ紹介では8巻から)。 一応作者の考えてる役回りは「悪役」 追記・修正は偽名を名乗ってからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 初登場時から罵詈雑言を喚き散らし、非常に不愉快な奴だった。自分では何も出来ない癖に偉そうに威張り散らして、どうしようもない人間のクズだ -- 名無しさん (2014-01-31 15 11 36) こいつは他人を散々バカにしてたけど、一番どうしようもないのはお前の方だと思う。まあ他人を見下していないと、自分を保てない可哀想な奴なのかもな。 -- 名無しさん (2014-05-04 14 32 01) 『陰謀』での、みくる誘拐と『驚愕』での、長門を倒らせたのも、ハルヒ殺害も全部人任せの癖に、卑怯な小物の分際で尊大過ぎだ -- 名無しさん (2014-09-20 21 03 34) 名前 コメント
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「ねぇ、キョン。駆け落ちしよっか?」 朝っぱらから物思いに耽っていると思ったら・・・何を言い出すんだ、コイツは。 ”駆け落ち”なんていう言葉は、お互いを愛し合っているが結ばれない運命にある二人がその運命を打ち破るためにだな。 「あたしとさ、樹海に行かない?」 しかも、死ぬこと前提でかよ。 頬杖つきながら、ぼーっとした顔で空を眺めんでくれ。 俺はいつも馬鹿みたいにテンション高いお前しか知らんのだ。 そんな違う一面を見せられたら、したくなくても『なぜか』動揺してしまう。 「ねぇ、聞いてるの?」 頬杖を止めてこちらを向いたハルヒの眉がキリキリと上がる。 これでこそ、俺の知っているハルヒだ。 論理的な思考型な俺は、理由を聞いてから何事にも答えるようにしているが、 ハルヒは突飛なことを言う割りにその理由を聞かれると不機嫌になるし、答えようとはしない。 『駆け落ちしよっか?』って言った理由をハルヒに聞くのはナンセンスだ。 …だが、聞いてしまう。 だって、それが俺の思考パターンだからだ。 「聞いてたけど、どうしてまた駆け落ちなんだ?・・・その前にどうして俺なんだ?」 こいつはいつも主語と述語が抜ける。そして、その経緯、説明もない。 まるで”私の思考はアンタには伝わってるから、説明しなくてもいいのよ”みたいな。 あいにく俺は、古泉みたいに超能力者でもないから相手の思考を読み取ったりできない。 …ってアイツは閉鎖空間の中でしか能力使えなかったか。 例えにもならないとは、本当に使えない奴だ。 「キョンなら、着いてきてくれると思ったの!」 恥ずかしそうに目線を外す・・・普通の女の子っぽい仕草も出来たんだな。 って、どうして俺なら着いてきてくれるなんて思ったんだ? 俺の思考を読み取ったかのようにハルヒが続けて口を開いた。 「だって、アタシのいう事素直に聞いてくれるんだもん。だから」 ちょっと待て。この際、俺の長所・性格・人物像は関係なしかよ。 どうみても、ハルヒの主観イメージだけじゃねぇか・・・ しかし、俺が安易に否定すればハルヒはまた不機嫌になるだろう。 古泉・長門・朝比奈さん(大)は口を揃えて、その事を忠告したけど、俺には関係ないし、 どうするかはハルヒ次第なのだから・・・ごく平凡一般の俺がとやかく言っても仕方がない。 まぁ、古泉の言っていたハルヒの言葉をできるだけ尊重するようにしてやんわりと話を流してみるか。 「お前がどうして『駆け落ち』だとか、『樹海に行きたい』とか言ったか分からんが、そんな事しなくても俺は3年間お前にこきつかわれる運命だ」 「いつ、何処で、何時、何分、何秒にアタシがアンタをコキ使いたいって言ったのよ!」 「お前の俺への態度を見たら、誰が見ても奴隷とご主人様みたいな関係に見えるぜ?」 ハルヒが何か言おうとしたので、トドメの一撃を刺しておこうと思う。 「でも、別にお前に使われるのは嫌いじゃない」 ちょっとでも、恥ずかしい台詞を言われるとあたふたして、柄にもなく論理的に否定したり、話変えたりするから この戦法はかなり有効なのだ。・・・しかも、実証済み。 すると、暫くハルヒは何か考え込んだ後、パチンと手を合わせて、俺を指差した。 「決めたっ!アタシに使われるのが好きなら、高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ」 「・・・なーんて、事があったんだよ」 部室にて、古泉と将棋を指しながら今日の昼休みにあった事を話した。 …というか、どうしてコイツは手数掛かるのに穴熊作ろうとしてんだ?その間に攻め込まれたら終わりなのに。 「キョン君はまた仕出かしましたね」 なんて、真剣な台詞をにこやかに言う古泉。 続けて「僕のバイトもずっと続きそうですねぇ」なんて言いながら、ため息つきやがって。 「どういうことだよ?俺がなんかやったか?」 俺が質問を投げかけると、古泉は鼻の頭を撫でながらこう言った。 「涼宮さんは新たに思い込んでしまいました・・・いや、決意したと言ったところでしょう。彼女は言ったのでしょう? 『高校3年間と言わずその後も使ってあげるわ』と。その意味は分かりますか?その後とは彼女にとってどれぐらいの期間なんでしょうねぇ。 その言葉を推理して、最も現実的で実現可能な事となると・・・」 「なんだよ」 「キョン君。結婚式には呼んでくださいね。・・・あと、あなたは主夫に向いてますよ」 古泉がまたアホな事を言い出した。 こいつは、推理してるとき自分に酔っているんじゃないかと思うことがある。 推理に気を取られて、将棋がおざなりになっているのはコイツらしい。 「王手・・・はい、どうやっても詰みな。しかし、お前の例えはよく分からん」 「はは、負けちゃいましたね」 自分が負けたのにニコニコとしているのもコイツらしい。 さて、と。ハルヒが朝比奈さんの写真撮影を終えて帰ってくる前に、このフラッシュメモリにmikuruフォルダを移動させておくか。 将棋の片付けをしている古泉がポツリとこう言った。 「あなたは、涼宮さんにプロポーズしてOKされたんですよ。順序から言うと、涼宮さんがプロポーズして、あなたがOKしたというか」 なんて言いながら、クスクス笑う古泉。 今のお前相当キモイ悪いぞ。 fin
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(この話は長編・「Another Story」の設定を遵守しています) 秋…。盛大な十五夜の団子パーティから1ヶ月が経ち、 ようやく持って夏は列島から去っていったらしかった。 確かに熱くてかなわなかったが、この身体ごとどっかに持って行かれそうになる 冷たさを含んだ風はどうにも苦手だ。矛盾してるねぇ。 深い緑はすっかり赤、あるいは黄色に変わって、 この通学路も売れない画家の絵くらいには様になってるんじゃないかって風情がある。 今日も健気にその絵の中の通行人Aと化している俺だったが、 まぁ、なんだろうね。しばらくは何にもなかったし、まさにそれがゆえ、 そろそろ何かしら発生しなければおかしいのではと考えてしまうのは もはや職業病、いや、団員病か?そんなものがあればの話だが…。 教室では文化祭の話もちらほら出始めているが、 なんせやる気のないうちのクラスのこと、本格的に動き出すのはもうちょっと 先のことじゃないかね…などと思いつつ、俺は40過ぎの中堅サラリーマンよろしく よっこいしょといつもの席に腰を下ろす。 窓を開ければ涼しい風が吹いてくるので、もうノートを団扇代わりにする必要もない。 1週間後は中間テストだったが、一瞬思い当たった直後に俺はそのことについての思考を放棄した。 「ねぇねぇ、文化祭でうちのクラスは何をやるのかしら?」 後ろの女、涼宮ハルヒは、シャーペン攻撃と同時に俺の後頭部に言葉を投げた。 「さぁな、このクラスのことだ、出来上がるものもたかが知れてるんじゃないか」 まぁ、うちのクラスに限らず、しょぼい公立高校の文化祭の出しもののアベレージなど、 わざわざここで行数を裂いて語るまでもないね。 だが…このクラスがもし全く無気力なままに文化祭を向かえようとしたら、 それはそれで困った事態になるような予感もしているんだ。 きっと失望したハルヒは、次の瞬間「私たちで何か出し物をすればいいのよ!」とか 言い出すに決まって… 「SOS団でも何かやらない手はないわよね!」 俺がモノローグを終えるまでもなくハルヒは予測を見事に実行してくれた。 もしこの世にハルヒダービーなるものがあれば大賭けの大儲けできるだろうね。 そんなもんが存在した日にはこの世の終わりもいよいよ近いだろうが。 ってなわけで放課後だ。 俺は古泉とまわり将棋をしていた。 おおむね俺が勝っていて、これはまぁいつものことなので特筆すべき点もない。 朝比奈さんは最近紅茶に凝りだしたようで、かつて湯飲みを満たしていた 緑色の液体は、この山の木々と連動するかのように、今は朱色になっていた。 俺としては、今までどおり緑茶であった方がよかったのだが…。 長門は季節が秋になったことに伴って…なのかは分からないが、 読書の秋と脳内プログラムの一行目にコードが書いてあるかのごとく、 普段の倍近い量の(これは俺の感覚測でしかないが)ページを繰っていた。 で、団長様であるが、放課からかれこれ1時間ほど姿を見せない。 同じクラスではあるものの、一緒に部室に行く、なんて 鳥肌の立つ行動をすることは滅多になく、大抵はどちらかが掃除当番だったり、 何かしら思いつきの準備に奔走していたり…まぁそのどっちかの理由で、 俺とハルヒが同時にここの扉をくぐることは少ないのだった。うん。そうなんだよ。 ハルヒが扉を開ける時は、大抵威勢よくバーンと音響がするが、 驚くべき事にかちゃりとノブがひねられ、しずしずと歩を進めてきた。 いや、別に落ち込んだ様子があるわけではない…ように見える。 「さて、今日も部室の掃除をしなくちゃ」 第一声。誰の?分からないか?まぁ無理もないか…。 俺は驚きの連続で、それは他の団員も同じらしかった。 古泉は微笑顔がこころなしか強張っている気がしたし、 朝比奈さんはきょとんとして大きな愛らしい瞳をぱちくりしていたし、 長門ですら先ほどの倍速読書を通常ペースくらいには速度を落として、 目の端でどこかおかしいこの人物を見ているようだった。 さて、無意味に引っ張りすぎたね。そう、つまり、ハルヒが入ってきて早々に 箒片手に掃除を始めやがった。部室の。なぜだ?今まで一度でもそんなことがあったか? 「ふんふんふーん、ふふふふふん♪」 にこやかに笑いながらハミング…しているこいつの行為は、 普段なら朝比奈さんの通常業務で、それはすなわちハルヒは決して自分ではやらないことであり、 簡単に言ってしまえば雑用だった。時によっては俺の役目でもある。 「ハルヒ…?」 俺は上ずった声を抑えられず言った。まぁしょうがないと思う。 「なぁにキョン?私はいま掃除中なの。用件ならあとにしてくれるかしら」 言うなりそのままさっさかとチリトリからゴミ箱へ埃やら何やらを移し、 今度ははたきを持ち出して部室内の壁をぽこぽこやり始めた。 …何だ?急に潔癖症にでもなったのか?ハルヒが掃除?天変地異か? などと考えるのはさすがにオーバーかもしれないが、それは俺が今まで体験してきた 事柄をふまえての事であって、そういう時は大体こうやって日常に対するささくれのような 出来事が、不意に俺たちの前に去来してくるのであった。 これもそうなのか? 「おっはなに水をーあっげまっしょう~」 掃除が終わると今度は花の水を変えるべく花瓶を持って部室から出て行きやがった。 これはどうなっているのか。俺はすぐさま向かいの人物に対しこう言った。 「今度は何だ?」 「僕が訊きたいくらいですよ」 古泉は未だ強張った微笑フェイスのまま言った。こいつなりに気持ち悪さを感じたのだろうか。 他の2人を見ると、朝比奈さんはふるふると首を振り、長門は最早 倍速読書に戻っていて、長門的には大したことではないらしかったが、 いや真っ当な感性を持つことを自負している俺としてはどうにもむず痒いぞこれは。 またどこかしおらしくハルヒは戻ってきて、花瓶を長門のテーブル脇にそっと置くと、 上機嫌のまま団長机に腰掛けた。のだが…。 「みくるちゃん、お茶くださる?」 この言葉に朝比奈さんは数秒反応できず、なぜって、ハルヒは何かシニカルな調子で こういう口調をとることはあっても、決してどこかの有名私立校のお嬢様よろしく微笑みかけて 湯飲みをさし出したりはしないだろうから…だ。 明らかにおかしい。どこかバグッたかショートしたか、何かの設定がいじられたか… とにかくそのようなことがあったとしか思えない。 さらに極めつけは、 「ねぇキョン、今度の休日に一緒に買い物に行きません?」 などと俺の皮膚が分離して脱皮できてしまいそうなことを言い出した。 「…お前、風邪か?」 口をついて出たのはそれだった。うん、きっとそうだ。 こいつは普段風邪なんてものとは無縁の生活を、そうだな、何年も送っていただろうから、 そのツケが今このときに回ってきて、それには季節はずれの花粉症やら何やらも混入されていて、 えーとつまり… 「熱があるんじゃないか?」 俺はハルヒの額に手をあて、残った方の手で自分の額を押さえた。 平熱。俺自身がインフルエンザにでもかかっていない限りこいつはいたって普通である。 俺は今自分なりに普通モードの思考形態を維持しているはずだから、やはりこいつは健康体のはずだ。 「何するんですか?私は何ともありません!離してください!」 ハルヒは少し腹を立てたようだったが、それがまた奇妙だった。 行動で表すのははばかられるから、大人しく首だけ横向けてつんとしているような…。 なんだか元のハルヒがどんなであったか一瞬忘れそうになったが、 部活を作ると言い出したときのあの表情を思い出して俺は何とか自分をつなぎ止めた。 「それで、買い物には付き合ってくれるんですか?」 …えーと、俺は何て言ったんだっけ? 例えばこれが小説だったとして、いきなりこのように人物設定が変えられてしまったら、君は想像がつくだろうか。 いや、俺は当事者である以上想像どころか現状を鵜呑みにしなきゃならんわけだが…。 そんなわけで俺はなぜいつもの待ち合わせ場所に一人でいるんだろうね。 15分前。待ち合わせ場所に着く時には俺はいつだって最後で、 それは誰かの謀略でしかなく、それがハルヒによるものであれば俺は両手を上向けて いつもの言葉を言うしかないのだが、今日のこのシチュエーションは一体どういうことであろうか。 のっけからぶったまげる事うけあいなセリフをハルヒは言った。 「遅れてごめんなさい!待ちましたか?」 小首を傾げてこっちを上目遣いでうかがっていやがる! 「ちょっと待ってくれ」 俺は近くの公衆トイレに向かい、自分が見たこともないような複雑な表情、 というより、取るべき表情を選びすぎた結果全部足して平均を取ったような、 何だか分けのわからん表情をしているのをみて、顔を洗って頬をぴしゃりと叩いた。 さし当たっての処置として、俺はこいつ、隣りで端整な表情を前に向けている女を別人として扱う事にした。 そうだ、俺はふとした事で知り合った女性と今日この日だけ買い物に付き合って、 その後は笑ってバイバイ、あぁ楽しかったねと無事ウィークデーに復帰するわけである。 学校でならまだ他の団員がいるわけだし、こんな切り替えをせずとも何とかなる…というかなってくれ。 「前から買いたかった服があって…貯金してたんです」 とこのどこかの国の住人さんは言った。 ん?いや、どこかの町に住む少女は言ったんだよ。うん。 買い物場所は待ち合わせの駅に唯一あるデパートの女性服売り場だったが、 こいつのチョイスを見た俺は思わずギクリとしてあたりをキョロキョロしてしまった。 今のうちに言っておこう。今日の俺は自意識などとうにわやになっていた。と。 これは明らかに朝比奈さんの守備範囲だろう。 お嬢様風というか、どこかのパレスガーデンを歩いてそうというか、 日傘もオプションでつけたら素敵ですね…みたいな。まぁ…そんなの…だ。 眩暈がした。何にかは俺には分からないぜ。 今日一日こいつはこの格好で街を歩くつもりなのか…。 「楽しいですね、ふふ」 悪い予感ばっかり当たるのは何故だろう。分かった人はここに特電をかけてくれ。 ちなみにイタズラ電話やら出前と間違えてかけたなんてのは勘弁だぜ。 これは第三者から見たら、というか、俺から見たって何の変哲もないデートであった。 ちょっと待て、これはないだろう、以前の問題だ。 どこぞの三流作家でもこんなベタな展開には飽き飽きだろうが。 「お前、正気なのか?」 「何がですか?」 「っていうか何で俺だけ呼ぶんだよ」 「だって、いつも5人だったでしょう?たまにはいいかなと思って…」 そんな可憐になるな。うつむいてしゅんとするな。映像担当の人が困るだろ。 いやそんなことはどうでもいいんだ。 「お前昨日の記憶あるか?」 「昨日?」 時間は昼になっていて場所はレストランになっていた。 今のところお馴染みの喫茶店の出番はないらしく、マスターの顔を拝むのはしばらくおあずけかもしれん。 「そう。特に昼以降のだ。」 こいつが普通だったのは昨日の授業中までだと思うが、 昼休み以降は会話した覚えもなかったので、そこから先は普通だったか疑問である。 「そうですね…昨日は、お花に水をあげて、掃除をして…」 言葉だけ切り取ればそのまんま朝比奈さんな文面だったが、声の主は間違いなくハルヒで、 見ていると混乱した挙げ句思考に支障をきたしそうだったので俺は片手をテーブルにおいて 頭を抱えるように視界をさえぎった。 「その前は…図書室に行っていました」 あの1時間か。それで?何でまた図書室なんかに行ったんだ?らしくないな。 「えぇっと…ファンタジーの資料というか、物語を集めに…」 まさか文化祭の出し物の準備じゃないだろうな…。 「そうですよ?クラスでやるものを提案しようと思って」 どうやらキャラクターまで変わってしまったらしい。 きっと今のこいつなら道端に落ちてる1円玉ですら拾って交番に届けるだろうし、 もちろん老人や妊婦がいたら席を譲り、もしかしたらタバコの吸い殻とか空き缶ですらちゃんと クズカゴにいれるかもしれない…。 「その時に、何かおかしな物はなかったか?」 「おかしな物?」 だからきょとんとするな。そしてそれを見るな俺よ。 これはよくあるヒーロー物の悪の組織が俺をたぶらかすために仕組んだ演技だと思え! 内なる波をなんとかいなしながら俺は質問を続ける。 「そうだ。例えば本のひとつから妙な感じがした、とか、 司書のおばちゃんの視線が何か不自然だった、とか」 「そんなことないですよ?本は綺麗でしたし、おばさんはいい人でした」 …見当がつかん。所詮俺ひとりで解決するのは無理なのか。 その後の俺は混乱するだけで一日を終え、帰ってきて 今までのSOS団市内探索のどの回より疲労していた。あいつは誰だ。 ベッドに突っ伏してそれらしく唸っていると、かちゃりと扉が開いて妹が顔を出した。 「お兄ちゃーん、ノリ持ってなーい?」 俺はそのまま机の方を指差して、後は何も言わなかった。 …えーっと、涼宮ハルヒはSOS団団長でフランクかつハイテンションのヒステリック…。 などと特徴を脳内で箇条書きにしているうちに俺は眠ってしまった。 何となく、俺はこの問題に関しては誰の助けも借りたくなかった。 どうも問題はハルヒの性格ダイアルが反対方向に回ってしまったことのみらしく、 それで他に問題が起きるとも思えず、むしろ迷惑自体は地球全体で見れば減っているはずだ。 だが戻さないわけにはもちろんいかない。ハルヒがこのままだったら俺は一週間もしない内に発狂する。 二時限目だった。数学の吉崎がねちっこく新しい公式を説明していた。なんのこっちゃ。 「やれやれ」 我ながら今日のこのセリフには覇気がなかった。いや覇気というのか分からんけどもだ。 転機となったのは昼休みの国木田のこのセリフだった。 「昨日の涼宮さん、何か変じゃなかった?」 いや今日も順調に変だぞ。大好評継続中だ。なんて授業中じゃ分からんか。 というか変なのは年中そうなのであって、今回は変なのが普通になったから変なわけで…。 「そういや今日も何となく大人しいな」 谷口が唐揚げを口に含みながら言った。 「うん、何か昨日の昼休みの初め、ぼーっと空を見上げてたんだ」 国木田が答えた。別に窓の外を見てるのは珍しいことじゃない。 「でもね、何だかそこに何か見えてるような視線だったなぁ」 「涼宮が普通の人間には見えないものを見てるのはいつもの事だろ」 谷口が言い飽きたと言わんばかりに返す。 「どのへんを見ていたか分かるか?大体でいいんだが」 俺は国木田に訊いて、国木田は窓から右、校庭の先には街並みが広がっているだけの方向を指差した。 すぐさま窓に近付いてそっちの方を見てみたが、もちろん何もない。 「そりゃそーだろ。キョン、お前は普通の人間なんじゃないのか?」 もちろんさ、谷口のこの言葉に含みなんかなく、文字通りの意味だろうが、 俺はいつだって面接で言ったら即不採用になりそうな妙な経歴はない。 さて、俺は部室で悶々としていた。 ここで何も思い浮かばないようなら通例に則って古泉、または長門あたりに助けてもらうことになりそうだが。 「お困りでしたら、相談相手になりますよ」 という古泉の申し出を俺は「まだいい」と言って断った。 長門はその時だけこちらを見ていたが、それを聞くとすぐに倍速読書に戻った。 せめてあと1日粘ってみよう。自分でも何故こんなに頑固になっているのかは分からない。 そういう時だってあるもんだ。思春期のせいにでもしとけ。 ハルヒは今日も掃除と水替え、さらには朝比奈さんの仕事を奪ってお茶汲みまでおっぱじめた。 「あの…それは私が…」との朝比奈メイドの言葉に、ハルヒは 「いいんです。いつもやってもらっていますから、たまには私が」と、 歯が20本総出で緩んで外れてしまいそうなことを言い、ついでに 「キョン、今日も付き合ってほしいところがあるの」 と言って俺を完全にノックアウトした。 俺だってもううんざりな心持ちさ。 いっそ俺も呆我してしまえればよかったが…まだくたばるには早い。 ハルヒが俺を誘ったのは、自宅からさほど遠くない小さな公園だった。 「私ね、たまに不安になるのよ」 「何が?」 半ば投げやりに俺は言った。例によってハルヒの方は見ない。 「SOS団の皆は私のことをどう思ってるのか」 これには虚を衝かれた。突然そこに戻るんだな。 「だって、私が作った団体だもの…。毎日が楽しくなればいいと思って」 今のこいつの脳内でどういう経緯と設定があったのかは知らないが、 少なくともどうやってかハルヒが団員を集めた事には変わりないらしい。 「だから古泉君や有希、みくるちゃんが退屈してないか、たまに不安になる」 退屈とはむしろ逆の方へ向かう事しばしなのでそのへん心配はないが、 これは果たしてこのハルヒ限定のことだろうかと、ふと俺は思った。 「ある日突然、皆がいなくなってしまうんじゃないかって、時々思う」 気付けばハルヒの方を向いてしまっていた。が、別人だと思う必要はないように感じられた。 あの七夕の日の、どこか物憂げなハルヒがそこにいて、一時的に人格が変わっていようが、 そういったごく稀に見せる部分は共通項としてこいつの中に存在しているらしかった。 「だから、そんな時にふっと窓の外を見たりして…」 ハルヒはくすっと笑って、どうやら別人格モードに入りそうだったので俺は再び前を向いた。 「あ。あのな、ハルヒ」 「なに?」 視線を感じたがそれには応じない。 「そんな心配は全くの思い過ごしなんだ。俺は、いや、お前以外のSOS団団員は、 この団に入ってよかったと思ってるし、そうでなかったらきっとこの日常はありふれた つまらないものになっていたとも思ってるぜ」 「…。」 ハルヒはまだこっちを見ているようだった。何かを言いそうにはないので、俺は続ける。 「だからな、そんな事は取るに足らない。お前はこれからも団長でいればいいし、 思いついたことをどんどんやってくれれば、それで俺たちは楽しいんだよ」 このハルヒが実行する思いつきは果たしてどんな物になるのだろうと思いつつ、 しかしそれに対し自分で答える間を与えず、ハルヒは言った。 「そっかぁ…。そうだよね」 「あぁ、気にしなくていい、お前が憂鬱だと皆が元気じゃなくなるぜ」 「ありがとう、キョン」 ハルヒはぼーっと空を見上げた。もう夜だった。 曇りらしかったが、切れ間に星が見え、輝きを返す。 ―その時だった。 ハルヒが急に動かなくなり、一瞬目に暗闇が落ちた…と思いきや、また輝いて、気を失った。 「ハルヒ!」 俺は頬を叩いた。いきなりどうしたんだ?? 「ハルヒ!しっかりしろ!」 「…」 「ハルヒ?」 「…ん?」 「大丈夫か?」 「…キョン」 「あぁ、俺だ。大丈夫か?お前…」 「何やってんのよ」 「何ってお前…」 バシッ! ある種王道、と呼べなくもない展開である。 なぜなら、俺はハルヒが倒れた拍子にこいつを抱き起こしており、 それで何故叩かれたかというと、もちろんさっきまでのこいつならそんなことはしないはずで、 つまり端的に言ってしまえば…戻ったのだ。こいつは。 何でだろう? 「あんた、あたしになにしてたのよ!」 「何って、何もしてない」 俺は断固として言った。ハルヒに何かしてひっぱたかれるくらいなら、 いっそ朝比奈さんを抱きしめてアイラブユーとでも言った後にこいつに 絞首刑にされるほうを俺は選ぶね。 「そもそも、あたし何でこんなところにあんたと二人でいるのよ!」 お前が誘ったんだ、と言うと今度は平手がグーに変わりそうだったので、 「お前が俺の家で文化祭の計画を練るって言った帰りに、お前は失神した」 と言ったが、こいつは簡単には信じず、 「あたしが失神?何でよ、そんな経験今まで一回もないわよ」 だが起きてしまったんだ。と結果論でまとめようとした俺に、 「じゃぁすぐさまあんたん家で文化祭の企画を考えるわよ! っていうか何であんただけなわけ?今からでもみくるちゃんと古泉君と 有希を呼びなさい!」 まず命令すんのかよとわざわざ言ったりせず、 俺は携帯を取り出してプッシュを開始する。 そうして見事に、文化祭企画会議第一回が開催されることに…なってしまった。 「涼宮ハルヒはこの星系から7つ離れた空間に位置する意識体の発信した念波を受け取った」 …長門の説明である。 普通の人間であればもちろん受信できないし、現時点で地上のいかなる技術力をもってしても、 それを確認できる距離にはないそうだ…。 相変わらずデタラメだな。俺が傍観者なら笑い飛ばしているところだ。 だが長門はいつだって真実しか言わないのである。 少なくとも長門が嘘を言った事はこれまでにない、はずである。 その念波によってハルヒはあの性格になっちまい、 さっきの星の方角にあった逆の波動によって元に戻った、と、 何とも後付け設定的匂いのプンプンする解説だぜ。 これが古泉のものだったら俺は脳に止める事を拒否していたかもしれん。 ちなみに波動はピンポイントなもので、今後地球に命中する確率は天文学的数値らしい。 ふと俺はさっきまでのハルヒを思い出し、外に鳥肌、内に吐き気を感じ、 すぐさま休日の出来事も一緒にフォルダごとごみ箱に捨ててしまった。 ハルヒは5人で入るには狭すぎる俺の部屋で、ベッドの上で仁王立ちして計画をぶち上げた。 …それはまぁ置いておくとして、こんな事件はいい加減マンネリではないのかね? などと考えつつSOS団員達を睥睨して、溜息。 それでも感情は裏腹だな、と気付いてしまった事は、俺の胸の家だけに秘めておこう。 ごみ箱に入れただけで完全に消去してはいない、あのハルヒの記憶と一緒に。 終了
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真夏のある日のこと。 SOS団の活動もない休日の午後、エアコンの不調により、うだるような暑さに耐えかねた涼宮ハルヒは、涼を求めて酷暑日の街を彷徨っていた。 「涼み処の定番、図書館はやっぱり人でいっぱいだったか……」 街中で配られていた、どこかのマンションの広告が入った団扇で扇ぎながら、街中を歩く。 「そもそもSOS団団長たるあたしが、人と同じ発想で涼を求めててどうすんのよ……」 さすがのハルヒも、この暑さに思考が常人並みに変化していた。 「あぢぃ……」 コンビニエンスストアでは、ごく短時間しか留まれない。北口駅前のショッピングセンターでは、時間は潰せるが座る場所がない。 「あ゛~……もうこうなったら、環状線にでも乗りに行くか!?」 その路線は最寄りの駅からさほど遠くはないにしても、別に鉄ちゃんではないハルヒにとって、ただ列車に乗っているだけという行為は、到底耐えられる代物ではない。 「雪でも降って涼しくならないかな……雪……ゆき……ユキ……有希……?」 「呼んだ?」 「うひゃあぁぁっ!?」 唐突に背後から掛けられた、見知った人の声に、ハルヒは飛び上がった。 「有希!? いきなり声掛けるからびっくりしたじゃない!」 振り返った先に居た文芸部部長、そしてSOS団員の長門有希は、珍しいことに私服だった。あまりの暑さに、制服ではもたないと判断したらしい。 「……いや、あの、有希……? 私服なのはいいことだし、今日は凄く暑いってことも分かるわよ? だけど……」 確かに、有希の服装は、理に適っていた。実に夏らしい。 「その格好じゃ、どう見ても男の子よ――――――――――――!!」 Tシャツ、短パン、サンダルに麦藁帽子。体格と相まって、可愛らしい小学生の男の子にしか見えなかった。知り合い以外に、この姿を見て「女子高生」と思う者は居ないだろう。 「この服装は、知り合いに『似合うし、機能的だから』と薦められた」 「確かに、これ以上ないくらいに似合ってるけど、似合う方向性が違うというか、何というか……」 「……?」 「……ま、いっか。それにしても、あんたと街中でばったり会うなんて、珍しいこともあるものね。てっきり図書館か本屋に入り浸ってるかと思ったのに」 とはいえ、海で遊んできた、という格好でもないわね、とハルヒは有希の姿を観察しながら言った。 「朝から図書館に居たが、人が多くなってきたので帰るところ」 「ああ、そういうこと。あたしもさっき涼みに行ってきたんだけど、人だらけで、あれじゃ落ち着いて読書なんてできないわね」 「涼みに?」 「うちのエアコンがぶっ壊れちゃってさ~、涼しい場所を求めて、このクソ暑い中を彷徨ってんのよ」 「……そう」 有希はハルヒに真っ直ぐな瞳を向け、 「それなら、うちに来るといい」 「え、マジ!?」 こくりと、無言でうなずいた。 ………… ……… …… … 「お邪魔しま~す!」 高級マンションだけあって、断熱がきちんとされている有希の部屋は、朝から無人で空調を効かせていなかったにもかかわらず、ひんやりとしていた。 「いや~~生き返るぅ~~~~」 「……飲んで」 有希はエアコンのスイッチを入れた後、冷蔵庫からキンキンに冷えた杜仲茶を出してきた。 「……ぷっは~! くぅ~~~~~~っ!!」 グラス一杯分を一気に飲み干したハルヒは、珍しく定時で上がったサラリーマンがビアガーデンで生中を飲み干したがごとき喜びの雄叫びを挙げると、そのままお替りを要求した。 「うまい! もう一杯!!」 「どうぞ」 こうして何杯か同じやり取りを繰り返した頃には、エアコンも効いてきた。 ハルヒは寝転んで全身からフローリングの冷たさを享受し、有希は借りてきた本の世界に旅立っていた。 エアコンの音をBGMに、ページをめくる音と、時折グラスの中で溶けた氷が立てる音だけが響く。 (暑い時には、何もない部屋っていうのも、いいものね……) やがてすっかり体力を回復したハルヒは、何となく、読書する有希を観察していた。 「……そっか。座椅子、買ったんだ」 孤島で合宿したときは、彼女は船の中で正座して読書していた。しかし今は、コタツの向かい側で、回転できる座椅子に座って読書している。 「……通販生活」 「買い過ぎには注意しなさいよ?」 「…………………………………………………………………………………………善処する」 「今の間は何よ、今の間は!?」 「気にしないで」 「気になるわよ!」 「…………」 「微妙な表情で見詰めるんじゃありません!」 「…………」 「しょぼーんってしてもだめ!」 「…………」 「こらー! 本で顔を隠すなー!!」 第三者がこのやり取りを目撃しても、有希の表情が変化しているとは思えないだろう。それだけ微細な表情の変化でも、ハルヒはきちんと見分けていた。 そんなやり取りもあった後、また落ち着きを取り戻した空間。ハルヒが一つ伸びをしたとき、それは起こった。 「ん? どうしたの、有希?」 有希の体が、不意にピクリと動いた。 「……足」 「足? ……ああ、当たっちゃったか」 ハルヒが伸びをしたとき、ちょうど前方に投げ出されていた有希の足の裏に、ハルヒのつま先が触れていた。 「を? ひょっとして有希は、足が弱いのかな?」 ちょんちょん、とハルヒがつま先で有希の足の裏をつつくと、その度に有希の体がピクリピクリと反応した。 「うりうり~」 ちょっと面白くなってきたハルヒは、次第に有希への攻めを強くした。 「……っ、うっ!」 「あ……」 一際大きく有希の体が跳ねた拍子に、彼女は膝をコタツにしたたかに打ち付けた。 「……………………………………………………………………………………………………」 「ごめん、ごめんってば! そんな涙目で、訴えかける視線を向けないでよ……」 ハルヒが必死に弁解するが、有希はハルヒにだけ分かる微妙な視線を送り続けていた。 やがてハルヒがいっぱいいっぱいになったところで、不意に有希は視線を逸らし、明後日の方向に視線を向けた。 「え……!?」 それで勝負はついていた。 ハルヒが自分の置かれた状況を把握したときには、背後に回った有希に床に倒され、脚を極められていた。 逸らした視線の先をハルヒが釣られて追いかけている間に、有希は超高速で移動していた。 「くっ、やるわね、有希! 今の技は、完全にやられたわ。でも、まだ負けないわよ!」 極められた技を外そうともがくハルヒに、有希は冷静に宣言した。 「あなたはもう、昇天している」 握り締め、中指の第二関節を突き出した有希の拳に、打撃が来るものとガードを固めたハルヒは、 「ひぎいっ!?」 悶絶していた。 「ちょ、ちょっと、有希! やめ……」 有希は構わず、固めた拳をハルヒの足の裏に突き立てて抉った。 「んのおぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!?」 「ここは胃」 さらに有希は、拳を捻じりながら滑らせた。 「あおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」 「ここは子宮」 有希の責め苦は続く。 「これは足の裏にある各臓器の反射区を刺激するマッサージ」 「足裏マッサージでしょ! 知ってるわよ! すんごく痛いんだから!」 「特に痛い所が、何らかのダメージを受けている部位」 「分かったから、離してよ!」 有希は無言でうなずき、掴んでいたハルヒの足を離すと、反対側の足を掴んだ。 「ちょっと、離してって言ってるでしょ!?」 「人体はバランス。片方だけの施術ではバランスを崩し、かえって悪影響を及ぼす」 有希はハルヒの足の指を強くしごいた。 「んぎひぃっ!?」 「じっくり丹念に凝りをほぐす」 「い、いやあっ! 痛いのいやぁっ!!」 ハルヒは涙目で、首を左右にフルフルと振りながら、イヤイヤをしている。 「にょああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」 有希の拳が、無慈悲にハルヒの足裏に突き立てられた。 ………… ……… …… … 「ひゅーっ、ひゅーっ……」 じっくり丹念に足裏の凝りをほぐされたハルヒは、もはや虫の息だった。瞳孔が開いている。 「全体をほぐし終わった」 「も、もう勘弁して……お願いだからあっ……」 普段のハルヒからは信じられないような、情けない声で有希に懇願する。 有希は静かに、ハルヒの足を開放した。 「た、助かった…………」 有希はそのまま台所に消えると、湯気の立つタオルを持って帰ってきた。 「仕上げ」 「あー……蒸しタオル、気持ちいい……」 地獄から一転、今度は極楽を味わうハルヒ。恍惚とした表情で有希に身を任せる。 ハルヒの足を蒸しタオルでくるんだまま、有希は静かに告げた。 「あなたが特に弱っているところは分かった」 有希の言葉に、ハルヒは最も痛かった部分を思い出して、赤面した。 「恥ずかしがることはない。女性にはありがちなこと」 「やだ、そんなこと言わないで……」 ハルヒは両手で顔を隠している。 「最後に、そこを……集中的に施術する」 有希の言葉に、ハルヒは今度は顔を青くした。 「ちょ、有希、やめて! 後生だから!」 「あなたが特に弱っているところは……」 有希は親指を立てた。 「いやぁぁぁぁ!! ソコだけは! ソコだけはー!」 ハルヒは両手で顔を隠したままイヤイヤしている。 「肛門」 有希の指が、ハルヒの足裏に深々と突き立てられた。 「アッ――――――――――――――――――――!!」 ハルヒの悲鳴が部屋中に響き渡った。しかし、悲鳴はすぐにかき消された。 「このマンションの防音は完璧」 「……どうしたの?」 有希はハルヒに声を掛けた。 返事がない。ただのしかばねのようだ。
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ハルヒによってSOS団に引きずりこまれてから一年が経過しようとしていた。 今ではもうすっかり未来人、宇宙人、超能力者、そして神様と一緒に過ごすことに慣れてしまった。 周りからは既に俺も変人軍団の仲間として見られるようになっていた。 まあそれでもいいと思っていたし、この非日常な存在に囲まれた日常を享受し続けるのもいいと思っていた。 だが、変化っつーものは突然やってくるもんなんだな。 その変化は、例によっていつものように、ハルヒから始まった。 朝、俺はダルいハイキングコースを昇りきり、学校へと辿り着いた。 あんだけ長い坂を歩くんだから、校門で飲み物の支給ぐらいあってしかるべきだと思うんだよな。 まあそれはいいとして、いつものように教室に入り、いつものようにハルヒに声をかける。 「よう。」 「……おはよ。」 だがハルヒの返答は、いつもの30%程度の元気しか無かった。 なんというか、SOS団を作る前の雰囲気に似ている。 「どうした、元気無いように見えるが。」 「……別に。」 全然「別に。」じゃないな。だがこれは触らぬ神に祟りなしな雰囲気だ。 こちらから下手にツッコむのはやめた方がいいな。くわばらくわばら。 「ねえ。」 と、触れないぞと俺が決心したと同時に、ハルヒが声をかけてくる。 結局、祟りは俺に来るんだよなあ。 「アンタ、確か2時間目体育でマラソンよね?」 「ああそうだ。今から憂鬱で仕方が無い。雨でも降ってくんないかねえ。」 ハルヒはそれを聞くと、不敵な笑みを浮かべた。 「降らせてあげようか。」 え? 今の言葉に俺はギョッとした。 何故ならコイツは、マジでそうすることが可能だからだ。 最も、コイツ自身は自分にそんな能力が備わってることは知らない。知らないはずだが…… 「何変な顔してるのよ、キョン。」 え?あ、すまん。ちょっとボーっとしていたようだ。 降らせてくれるのか?出来るなら頼みたいものだ。 「バーカ、冗談よ。あたしにそんなこと出来るわけないでしょ?」 そう言ったハルヒはいつもの笑顔だった。 俺の考えすぎか。そうだよな、コイツはただいつものノリで冗談を言っただけさ。 だが、2時間目。 「おい……マジかよ。」 つい20分前には雲1つ無い快晴だったはずだぞ? なのに何故、今外は大雨になっているんだ。 いくら急な天気変動と言っても限度を超えている。こんなことが出来るのは一人しかいない。 「すごい雨ねえ、キョン。」 ハルヒは笑っていた。まるでその光景が当然であるかのように。 「ハルヒ、まさかお前が……」 「はあ?何言ってるのよ。あ、まさかさっき言ったのを本気にしたの?」 「だが……」 「バカ言わないでよ。あたしにそんなこと出来るわけないでしょ?」 ハルヒは静かに笑った。だがその笑みはいつもの無邪気なものではなかった。 そう、全てを把握した上で、それを楽しんでいる笑み。 「ただの偶然よ。ただの、ね。」 俺は理解した。どんないきさつがあったかは分からない。 だがコイツは……涼宮ハルヒは、知ってしまったんだ。自分に関する、全てを。 続く
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今日は暖かい空気に包まれた2年生になってはじめての5月。 別に変わらないと思うかも知れんが、俺にとってはとてもいいことなのだ。 なんといっても、ハルヒが大人しく、何も暴走しないにもかかわらず、ご機嫌なのだ。 俺の顔を見るなり「おはよっ!今日から5月ね。気合入れていくわよ!!」というものの、何も起きない。 しかし、この後、俺が想像もしなかった事態になっていたことを知らされることとなった。 部室に行くと、そこには長門は居なく、別の奴がいた。 古泉一樹。自称、超能力者。 コイツだけとは珍しい。なにか企んでいるかのような笑みを浮かべている。 「お待ちしておりましたよ」 「何の用だ?また、ハルヒ絡みか。手短に頼むぞ」 「幸いです。僕も手短に済ませて置きたいことなので」 なんだ。もったいぶらずに言え。 「これは失礼。あなたにとってこれがいいことかは分かりませんが」 だからなんだ。気になるから焦らすな。 「実はですね。僕たちの力が少しずつ、使えなくなっているんです」 どういう意味だ? 「僕たち『機関』の方々の数名が閉鎖空間に入れなかったり、また入れたはいいものの、力が使えない、と言う人が続出してるんです。どういう意味か分かりますか?」 正直に言う。さっぱり分からん。力が使えなくなっただ?ハルヒが超能力者がいないものと本当に信じてしまったのでもいうのか? 「理解できてるじゃありませんか。その通り。彼女はもう信じていない。または、半分以上信用していない、ということです。使えないのは超能力者だけではありません。多分、長門さんや朝比奈さんもそうです」 「ちょっと待て。それは矛盾してないか?朝比奈さんがタイムスリップできなくなったら、未来の朝比奈さんは実在しないぞ。つまりだ、この場所で会った大人の朝比奈さんは居なくなるのか」 「いえ、その心配はありません。朝比奈さんの使っているタイムスリップシステムタイム・プレーン・デストロイド・デバイス、略してTPDDは未来に涼宮さんではない方が造られているので、TPDDの使用許可さえすれば、使わせてもらえるはずです。出来なくなるのはおそらく未来との連絡。つまり、連絡できる間に朝比奈さんは未来に帰らなくてはならないということです」 つまり、朝比奈さんが元居た時間対に俺たちからすると未来に帰るのも遠くない、ということか。 「そういうことです」 じゃあ、長門は? 「長門さんは統合思念体との伝達が出来なくなる恐れがあります。それか…」 「それか、なんだよ」 俺がそういったとき、調度いいタイミングで長門が入ってきた。 聞くに聞けない状況だ。 朝比奈さんが未来に帰り、長門がどうなるんだ? そういえば、大人バージョンの朝比奈さんと初めて会ったとき、久しぶりといっていてな。それはひょっとしたらこれが原因で帰らなければ為らなくなったんじゃなんだろうか… その後、ハルヒが掃除当番で遅れながら来た。 「あれ?みくるちゃんは?」 知らん。俺が来たときも居なかった。 「先程いらして今日は用事があって来れないと言っておくように言われました」 「そうなの。ま、いいわ。お茶は私が酌むわ!」 大丈夫なのか、という心配を抱きながら俺はまたさっきのことを考えていた。 そのとき、俺の携帯が鈍く唸った。思わず叫びそうになった。 メールが届いただけだが、そのメールを見てどれだけ驚いたか。 「すまない。俺はもう帰る」 「なんで?」 「おふくろからだ。直ぐ変えるようにと書いてある」 「ホントに?ま、いいわ。直ぐ帰りなさいよ」 俺は部室を後にした。 実はおふくろからというのは噓だ。 メールの送り主は光陽園駅前公園で待っていた。 「いきなりどうしたんですか?朝比奈さん」 そう、呼び出されたのは朝比奈さんになのだ。 「あの、話したいことがあるんです…えっと、禁則事項とかあるからあんまり分かりにくいと思うけど…」 「大丈夫です。それは理解の上です」 「良かった。で、本題なんですけど…私、未来に帰らなくてはならなくなってしまいました」 恐れていた事実に俺はただ愕然とすることしか出来なかった。 「上司からの命令なの…えっと、涼宮さんがなんていうか未来人を信じなくなって、いままでできた禁則事項の交換?見たいなのが出来なくなってしまうそうなんです。でね、禁則事項が普通に言えるようになってしまうんです。それだとこちら側からすれば歴史を変えることに繋がってしまうの。だから、後もう少しの間で電波が持つか持たないかって感じで、だから禁則事項が禁則事項なんです。ごめんね、わからないよね。でも、ここに居られるのもあと少しみたいなの…」 悲しそうに言う朝比奈さんを見て、ハルヒは何を考えてやがると思った。 「それだけです。ホントにいきなりでごめんね。じゃあまた明日部室で」 俺はくたくたになりながら家に帰った。 まさかこんなことになるとは思わなかったしな。 二人が言ったことがほとんど一致してしまう。恐怖とも言える。つまり、あと一人からもこんな話が… そう思いながら鞄を開けると何か紙切れのようなものが落ちたのを感じた。 見るとそれは栞だった。そこには手で書いたとはとても思えない字で『今日 午後7時 私の家に』と。 普通に考えれば誰かなんてわかんないだろが、俺にはわかる。 午後7時。俺は見慣れたマンションの見慣れた部屋に居た。 「………」 「で、何の用だ?」 もう分かってるさ。もう3回目だぜ?これでわかんないのは谷口ぐらいだ。 「上手く言語化できない。情報の伝達に齟齬が発生するかも知れない。でも、聞いて」 その前ぶりを聞いたのは1年前ぐらいか。もう1年経ったのか。俺もアレから少しは変わったな。もちろん、こいつも。 「私は、今、ここにいる。でも、もうそれも長くない。涼宮ハルヒが宇宙人の存在を信じなくなったから。私の使命は涼宮ハルヒを観察し、入手した情報を統合思念体に報告することだった。でも、伝達するのも今は限界が来ている。惑星表面にあった情報フレアも観測できなくなった。ここに不思議なことが起こることはもうないと思われる。あなたとの会話も統合思念体からの命令でしているが、それすらも出来なくなっている。地球上にいる有機生命体は100人以上がその犠牲となっている。そして統合思念体が出した結論。有機生命体の回収。私たちを回収し、涼宮ハルヒの観察を終わりにする。私はもちろん、喜緑江美里も回収される。朝倉良子のとき同様、我々は光となり、この世から身を引く。私たちの存在を知っている人には統合思念体が情報操作を行い、転校したことになる可能性もあるが、比較的高度な確率で私たちが地球人類にナノマシンを注入し、記憶を綺麗に忘れさせる方法の2種類ある。どちらにせよ、私たちはこの世から消え去る」 随分でたらめな話だ。なんだよ、それ。結局俺はかやの外か。 「ちがう。あなたは涼宮ハルヒにとっての鍵。それだけは変わらない。この突然改変もあなたが原因となり出来た」 俺が犯人なのか?俺は普通の人間だぞ?変わったことは何もしていない。 「私もそれは分かっている。ただ、問題なのは涼宮ハルヒ。彼女はあなたという存在に好意を示している。 「はあ?あいつが、俺に?馬鹿をいえ。あいつは恋愛感情なんて精神病の一種だと思ってる奴だぞ?それを今更。しかも何で俺」 「彼女はちょっとしたことでも感じてしまうほどデリケート。だからちょっとしたあなたの優しさでも恋愛と感じとってしまうほど」 俺があいつに優しく?冗談はよせ。 「冗談ではない。あなたは彼女のご機嫌を損ねてはならない。特大な閉鎖空間が発生し、そこに閉じ込められる恐れがある」 そういえば、前にもそんなことがあったな。 「私も出来る限りの全力を出して手助けする。あなたの望みなら私はそれに従う。それが私の最後の使命」 そうか…なんでもいいのか? 「いい」 「じゃあ。明日、ポニーテールで登校してきてくれないか?」 「私の髪型ではポニーテールは困難」 「なんでもするんじゃなかったのか?」 「…分かった。実行してみる」 俺のわがままを聞いてくれてありがとよ、長門。 「別に構わない。コレが最後の望みにならないように」 そういって俺は長門の部屋をあとにした。 次の日の放課後。俺は真っ先に部室に向かった。 ドアをノックしても応答がない。 部屋に入ると長門がいつもの場所で読書していた。髪型は昨日の俺がリクエストしたポニーテールで。 「長門、良く似合ってるぞ」 長門は何も答えなかったが、嬉しそうな雰囲気だった。 「あら、キョン。もう来てたの。今日はやけに早いわね。あら?有希。今日はポニーテールなんだ。そうだ!」 そういうと俺を廊下に追っ払い「いいって言うまで入ってきちゃ駄目よ」と言い残して部室に入った。 すると、朝比奈さんと古泉が並んでやってきた。なんでそんな組み合わせなんだ? 「そこでばったりあったんですよ。昨日あなたにいった情報を交換したかったですしね」 そうか。 「キョンくんはなにしてるの?涼宮さんがお着替え中?」 「さあ。俺もさっぱりで」 すると、部室から「もういいわよ」という声が聞こえた。 ドアを開けて驚いた。 着替えていたのはハルヒではなかった。 いつも朝比奈さんが着てるメイド服をポニーテールの長門が着ていたのだ。 すると、取り繕った笑みを浮かべて古泉が 「わあ。長門さん凄くお似合いですよ」 「でしょ?可愛いでしょ?たまにはこういうのもいいわよね。みくるちゃんは今日は着替えなくてもいいわよ」 機嫌よくいうハルヒに朝比奈さんは嬉しそうにしていた。 「有希って背小さいし、顔整ってるしで萌え的にはいい素材なのよね。それに今日はポニーテールだし完璧だわ!」 と、いうなり長門にお茶を運ばせるように命令した。 順番にお茶を配っている長門をみると、表情が変わらなくても、内心では緊張していたのかもしれないと思う。 「お茶…どうぞ」 俺にそういってお茶を渡すと元の場所に戻ってまた本を読み始めた。 なんか変な感じだな。無表情兼無口の長門と癒しキャラである偽メイド朝比奈さんが入っているので長門兼朝比奈さんになっている。そこに黄色いカチューシャを着けて団長と書いてある腕章をつけたら長門兼朝比奈さん兼ハルヒになってこれまた厄介なことになりそうだな。 その帰り、ふと古泉に尋ねた。 「なあ、古泉」 「なんでしょう」 「ハルヒがこの状況を作りあげたのなら元に戻る方法もあるんじゃないのか?」 「あるにはあります。でも、とても困難です」 「どうやるんだ?」 「そうですね…涼宮さんはあなたを好いていらっしゃる。ならば閉鎖空間であなたが本当に好きな人を告白してみればいいのですが、いまの涼宮さんが閉鎖空間を生み出すのは困難に近いんです」 まてよ…昨日、長門は機嫌を損ねると閉鎖空間が出来るといっていた。そして閉じ込められると。それと今の話。 「なんとかなるかも知れないぞ。明日、早速実行だ」 「あら?有希だけ?」 ゆっくり頷く長門。俺は今掃除用具入れの中に隠れている。ちなみに古泉は窓の外の足の踏み場が少ししかない場所。 朝比奈さんはホワイトボードの後ろに椅子を置きその上。ハンガーラックで調度いい具合に見えない。 「有希、今日はポニーテールじゃないんだ」 反応しない長門。 「ん。何?私を虐めてるの?有希」 すると、長門は本を閉じ、新しい本を出した。 「もう。私、帰る」 そういうと怒ったようにドアを閉めた。 「長門。ホントにコレでいいのか?」 「いい。これで今夜閉鎖空間が現れる」 夜俺が眼を覚ましたのは部室だった。 「キョン、やっと起きたの…またここよ。もう、この時期は変な夢を見るのよね」 そうかい。俺は夢じゃないのくらいわかる。 「キョン?どうしたのよ。変よ」 ま、きにするな。 「気になるわよ!…ま、いいわ。夢のあんたも変わり者ね」 「お前にだけは言われたくないね」 「そう。ね、ねえキョン。ちょっと外に出ない?」 そろそろくるか、古泉の言っていたことが。 「あ、あのね。夢のあんたにいうのもその、なんなんだけど…私、言える自身がないから、あんたにいうわ」 なんだ、このハルヒは。本当にハルヒか?不気味だ。 「あ、あ、のね。私、ね。アンタのことが」 そういうハルヒは俺の肩に手を置いていた。そんな俺はその手を掴んで、言い返した。 「ハルヒ、俺も言いたいことがあるんだ」 「え…?」 「あのな、俺実は…」 夢から覚めた俺は気分がすっきりしていた。 俺は迷惑だと思ったが、長門に電話した。 「…」 「長門か?あのさ、世界変わったか?」 「変わった。必要以上に・・・」 そうか。しかし何が必要以上に変わったんだ? 「・・・秘密。あえて言うならアナル。」 「なあ。ひとつ頼みがあるだが…」 次の日。 俺はまた忍足で部室へ向かった。 「ん?あら、キョン。遅かったじゃない。今日は古泉君がコスプレしてるんだからね」 古泉はいつもの場所で微笑んでいた。今日は映画で使った超ミニスカのウェイトレスの服だった。さらにツインテールだった。 「ねぇキョン」 「なんだ?」 「キョン、実際問題誰が好きなの?」 んなもんいない。強いて言うなら朝比奈さんだな。あのお方こそ目に入れても痛くないというものだ。 「ばかじゃないの」 馬鹿で結構。今は何言われても頷ける。 すると長門と朝比奈さんが入ってきた。またこのコンビか…朝比奈さんは少し涙目になっていた。 「みくるちゃん?泣いてるの?」 「い、いえ。違います。欠伸しただけです」 「そう。それよりキョン。あんた昨日なんで来なかったの?」 「行かなかったのは俺だけじゃないだろ?」 「責任者はあんたよ!!」 「何でだよ」 「何でもよ!!」 俺たちが言い合いをしてるときだった。 「ふふ」 微かだが笑い声が聞こえた。 その声の持ち主はハルヒでも朝比奈さんでも長門でももちろん俺でもない。 古泉が控えめに俺のアナルを見つめてた 「古泉?」 そういったかと思うといきなり満面の笑みを浮かべて 「古泉君がキョンを襲ってるわ!!」 そうだな、俺はそういって襲ってくる古泉から逃げていた。 昨日コイツに言ったのは間違えだったか? でも、朝比奈さんだといっても間違いじゃないんだしな。これでよかったんだ。 昨日俺が放った言葉。 俺は―――古泉以外のSOS団全員が好きだ。 ♪お・わ・り♪